アイスティーの氷をかき混ぜながら、ガラス窓の向こうに見える明るい髪色とじゃらついたシルバーネックレスを身にまとう男達をぼうっと眺める。ちゃらい、という言葉は彼らにとてもよく似合うだろう。
 ちゃら、と金属の擦れる音がちょうどその時したから、少しだけ驚いて私は視線をそちらへ向けた。ドリンクバーからコーラをグラスに注ぎ戻って来た旬平くんが、伺うようにこちらを見ている。さっきのは彼の服についたチェーンアクセサリーか何かの音だろう。

「何見てたの?」

 飛んできた質問に私は再び外に目を向け、釣られるように旬平くんもガラス窓の向こうを見た。道路を隔てた向こう側ではあるが、相変わらず数人で馬鹿笑いを浮かべる男達の姿がそこにある。

「あー…アイツ、こないだアンタに声かけてきた奴じゃん」
「顔見知りだったよね、なんか。結構いるの?」
「うーん…まぁ、ぼちぼち」
「前まで旬平くんもああだったんだよなあ」
「ちょお、あんな酷くないっしょ失敬な!オレはーその、もうちょい、…なんつうか、…」

 少し張った旬平くんの声も、すぐにフェードアウトしていった。思わず私がくすりと笑うと、少しむっと唇を尖らせるその表情。きっと言ったら怒るんだろうけど、ちょっと子供っぽくて可愛らしい。

「はあ…はいはい、そーですよ。オレは羽のようにかるーい軟派男でしたよ!」
「ピンクの服着てさあ」
「う…よく覚えてるね、アンタ…」
「よく考えたら、あの時中学生だったんでしょ?私本当に高校生だと思ってた、あの時」
「オレだって年上だとは思わなかったし」
「高いところが怖いとか」
「……」
「暗いところが苦手とかも、思わなかったなあ」
「うううるさい!」

 いまだに不貞腐れたような顔のまま、頬杖で逸らした視線で外を眺める旬平くんに目をむけ、私は笑う。
 第一印象はあまりよくなくて。それでも、だんだんと見えてきた彼の内面に惹かれて。きっと努力家である彼は、ひとつ年下だけれど、そんなことなど関係ないのだと思わせてくれるように頼れて、素直に格好良い人なのだと思わせてくれる。

「でもね、思うの」
「……、なに?」
「あの時、私に声かけてくれなかったら、今一緒にこうしてファミレス来たり、遊園地行ったり、そういうこともなかったかもしれないでしょ?」
「…ナンパでも?」
「ナンパでも」

 考えてみれば、学年も違う彼と接点を持つことは、偶然が重ならなければ難しい。彼からきっかけを作ってくれたから、今私たちはこうして一緒にいることができるのだ。
 彼の苦手なものも、隠してる趣味だって、知ることはできなかったはず。

「だからさあ、なんか、許しちゃうんだよね。旬平くんがナンパ野郎でも」
「っだ、ナンパ野郎ってひでえし!」
「大丈夫、もしまた旬平くんがナンパに走ることがあったら、次は私も逆ナンに目覚めちゃおうって思ってるんだから」
「いやいやいや何それ、マジ意味わかんねーから。いらねーよ?その構え」
「あはは」

 冗談まじりに言うけれど、彼のことを信じていないわけじゃない。大丈夫だって知っている、いつでも彼は私に好きをくれるから。だから私も安心して、それを返してあげられるのだ。

「ったく…知ってんでしょ、そんな心配いらねえってさあ」

 そして彼も、そんな私のことを知ってくれているはずで。

「オレもう、アンタ一筋なんだって。…他なんて見てる暇、ねえよ」
「わかってるよ。私もそうだもん」
「…はは。敵わねえのー」

 自惚れじゃないって、自惚れてる。でもきっと、真実。

(2010.07.27)


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