「見て見てせんぱい、購買でね、やっとね、焼きそばパンが!買えたのです!」
「………」
「あ、先輩買えなかったんでしょ。ずるいなーって思ってるでしょ。駄目ですよーこれは私のですからねー」
「………」
「でも優しい私はどうせお弁当を持ってきていないだろうバッシュ先輩のためにお弁当を作ってきたのでした!」
「………」
「ほらー食べましょうよ一緒に!窓の外なんか見てないでー…ってわーお今日は天気がいいなぁ!そうか先輩そういうことですね外でご飯が食べたかったとそういうわけですね!もう早く言ってくれればいいのにーそんじゃ屋上で」
「…だ」
「はい?」
「なんなのだ貴様はぁ!!」

 バシーン、と机と椅子を鳴らして立ち上がった先輩に、今まで此方を注目していなかったクラスメイトもさすがに目を向けた。プルプルと机についた手を震わせながら眉間に皺を寄せて私を睨む。ああもう、そんな先輩もす、て、き!…だなんて言ったら殴られるだろうか。

「どうして貴様は毎日毎日毎日毎日我輩のところへやってきては飯を食おうだの勉強教えろだの挙句の果てには一緒に帰ろうだのと…!」
「何を今更ーだから私は先輩が好きなんですってば」
「全く不愉快である!しかも貴様、弁当を持ってきたのなら何故購買でパンなど買っているのだ!貴様がそれを食えばいいだろう!」
「なんだ先輩優しいですね、大丈夫ですよ私の分もしっかりありますからほら!」
「なっ、…お前、一体どれだけ食うつもりなのだ…!」
「年頃の若い娘は食うんです。それよりほらー屋上にー」
「断る!」
「えーお弁当がもったいないー」
「貴様で食え」
「さすがに二人分は無理です!てーか先輩だってご飯ないくせにーこのこのー」
「放課後コンビニにでも行く、本日の午後の授業は短いのだ」
「せ、先輩がコンビニ!」

 バッシュ先輩がコンビニでお買い物なんて想像できません!そう言うと先輩は更に怒った。別に怒らなくてもいいじゃないか本当に想像できないんだから。それにしてもいつも先輩怒るけど今日はいつもより激しい気がする、何でだろう?まぁこれ以上怒らせるのもなんだし、この辺で一先ず引いておこうか。その代わり今日は帰りに下校しようと誘ってみよう(断られるだろうけどね)

「うう…じゃあ先輩のコンビニ姿に免じて今日は諦めますよ…」
「だから何なのだそれは」
「昼間っから騒がしくしてすいませんでしたー。そんじゃ」
「おい待て苗字」
「え、…はい?」

 突然苗字で呼ばれ驚いて振り向くと、いつの間にやら椅子に座りなおしたバッシュ先輩が右手を伸ばして私の方へ向けていた。開いた掌。ん?これはどういう意味でしょうか?首を傾げる私にバッシュ先輩はまた眉間に皺を寄せて、怒鳴る。

「いいから早くよこせと言っている!」
「や、先輩一言もそんなこと、っていうか、何を」
「弁当に決まっているだろうこのど阿呆が」
「え、」

 此方に目を向けてはくれないものの、頬杖ついたまま差し出された手は確かに先輩のものだ。恐る恐る持っていた弁当を一つその手に近づけると、バッシュ先輩は乱暴にそれを掴んで自分の机の上に置いた。

「貴様は二つも食えないのだろう。ならば我輩が食わねば腐ってしまうではないか」
「ふふふーなーんだ先輩やっぱり私のお弁当食べたかったんですね、もー!」
「…………」
「(睨まれた!)あ、でもじゃあどうせなら私と一緒に屋上で…!」
「調子にのるな!」
「それじゃ教室ですか?あ、じゃあ後ろの席失礼して…」
「調子にのるなと言っているだろう、帰れ!!」


(07.0731)


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