しとり しとり
雨が滴る 溜まった水が溢れる
何が悲しくてそんなにも泣くの?
どんよりとした曇天は何も答えてはくれない
そう ジュビアは雨女
マグノリアの街に、突然雨が降った。
いつからか傘を持たなくなったジュビアはぼんやりと、喫茶店の屋根で雨宿り。
魔法を使って帰ればよいのだけれど、どうにもそんな気分にもなれない。今朝見た幼い頃の夢が脳裏に霞んで、なんとなく気重になって、気分転換の買い物もこの雨でぶち壊れた。
「なあに辛気くさい顔してんだよ」
「グレイ様!!」
暗い気分が一気に晴れる。喫茶店の珈琲を片手にしたジュビアの想い人、グレイがいたのだ。しかも声をかけてくれた。「良かったら中で一緒に茶でも」なんて当然答えはYES。
「グレイ様は何をしてらしたんです?」
「エルザの荷物持ち…逃げてきた」
なんでもナツとグレイ様はいつものように喧嘩をしエルザさんに制裁されて罰として買い物の荷物もちを共にしていたという。そこに偶然雨が降り出して、エルザさんがわずかにすきができたので、逃げてきたそうな。
(羨ましい…)
どうしても思ってしまうその気持ち。たとえそれが兄弟のような関係だと、わかってはいても、それでもそんな近い間柄に嫉妬してしまうのは、仕方のないこと。
「雨が降ってラッキーだったぜ」
しかしニカッと笑うグレイ様に見とれ、もうそんなことはどうでもよくなる。
「ジュビアはどうしたんだ?」
「今日は夢見が悪かったので、仕事に行く気がせずお買い物しにきたのですが、突然雨が降って…あまりいい気分ではなかったのです…でも、グレイ様とこうして会えたので、今はとても幸せです!」
素直に、少し恥ずかしいけれど、会えて嬉しいこの気持ちを伝える。ジュビア大胆!
「夢見が悪いって、どんな夢だ?」
「…それは…小さい頃の夢ですわ。私が外を歩けば、こんな雨がいつだって降り続ける頃の」
そう、ついこの間まで、どんなに晴れた日でも私が歩けば雨になる。筋金入りの雨女。
「でも…グレイ様のおかげで、そんな日々から救われたんです。今はもう外を歩いても、雨は振りません。本当に感謝してます」
私の雨を凍らせて、白い恋という雪に変えたグレイ様。
「そりゃ…どうも。俺はたいしたこと、したつもりはないんだけどな」
「ジュビアにとっては凄いことなんです」
するすると、いつもは堅くなってしまう口先が動いてくれる。今ならその、気持ちを伝えることが…できるかもしれない。
「グレイ様…ジュビアは」
「!!! 隠れるぞジュビア!」
「へ?!え、ハイ!?」
手をとられ、喫茶店の奥の隅に連れて行かれる。どうやらエルザさんが喫茶店を少し覗きにきたらしい。突然の接近に、高鳴る鼓動。わけがわからなくて、目眩がする。
「よし、行ったか…ジュビアいきなり悪かったな…て…」
「グレイさまぁ〜…」
貧血で目を回す私に、グレイ様が慌てて、喫茶店のソファに安静な状態にしてくれる。曖昧な脳の働きでわかったのはここまでで、私は暫く気を失う。
そして、起きた頃には
「お、やっと目覚めたか。」
「ご、ごめんなさい、ジュビア…」
「ほら、空見て見ろよ」
「!…晴れてる」
雲から覗いた太陽の光が、窓に柔らかく差し込んで、温かい。
「さあてと、そろそろギルド戻るか」
「エルザさん、戻ってるかもですよ」
立ち上がるグレイ様に、ふふっと笑って応える。
「う゛、そうか…大分経ったしな。逆にギルドは危険か。そうだな…ジュビアの買い物つき合おうかな?」
「え!そんな…!!いいんですか!」
突然な提案に収まった鼓動がまた跳ねる。
「…と思ったけど」
意味ありげに俯いて、少しもの想いふけるグレイ様…。
「グレイ様って呼び方辞めたら、今度一緒に買い物行くことにしよう」
と笑って立ち上がり、出て行ってしまう。
「え、ちょっグレイ様、それってどういう…」
意味なんですか。と追いかけて、紡いだ言葉は晴れた空に消え。彼の片手を挙げた半裸の後ろ姿が、眩しく輝いて見えた。
.
腕の中には彼の上着
レインさんリクエストのグレジュビでした。
如何でしょうか…^_^
リクエストがなければ恐らく書くことのないCPです(笑)いや、凄い可愛いんだけど、原作の行方で左右されてしまいそうでビクビクしちゃうんですよ!
今回グレジュビについて真剣に考えてみて、グレジュビってなんとなく魔法陣グルグルのニケとククリに全く似てないけど凄く似ているな〜と思ったわけです(矛盾)
ほらククリ、ニケのこと最終回まで勇者様呼びだったでしょ!ジュビアもずっと様呼び!ってことで、グレジュビが初めて動くのは、きっとジュビアがグレイのこと、様呼びじゃなくて、対等な呼称になった時かな。と思うわけです。ジュビアはグレイのこと、盲目に崇拝していますからね(笑)
一周年記念のはずが、すっかり二周年になりましたが、リクエストありがとうございました!