頼りない貝殻が豊満な胸を覆い、腰から下がまるで魚の尾ヒレ。ほらあれだ星霊アクエリアスのようだなとニカッと目の前の楽天家な男は笑うのだが、こっちにしてみれば自分の身体に突然起こった出来事に放心してしまう。







信じられない話だろうが、近くの海で亀を苛めるガキンチョを追い払った所、その亀はなんと人の言葉を話し、竜宮城…へは連れていかなかったが、どこからか玉手箱のような箱を2つ…ではなく1つとりだし、ルーシィに渡したのだった。その箱を開けることを渋っていたのを見かねたナツが、いつものように強引に箱をあけ、ケムリがルーシィを覆い…

「こうなっちゃったわけね」

ミラ・ジェーンはにこにこと今度の表紙この人魚ルーシィでもいいんじゃないかしらとかとんでもないことを呟いてルーシィの大きな胸に頼りなくついた貝殻を触る。「何してるんですか!ミラさん!」「あら、魔法でこうなったんならこれがどんなものか気になるでしょ?」「ちょ、取れちゃうじゃないですか!」ハッピーが広めた人魚騒ぎに駆けつけた周りの男性陣が思わず赤面してしまうやり取りをしつつも、「これじゃあルーシィ立てないね」「変身魔法の一種なのだろうか」「時間で元に戻らないかしら」「その亀さん何者なの」と女性陣が本題を話し出す。しかしながら問題の亀は海へ帰ってしまった。はじめは尾ヒレは被り物なのかと思ったら、しっかり繋がって感覚もある。

「とりあえず今はまだ何もわからないわ」
「そうね。箱あけちゃった責任とってルーシィをよろしくね、ナツ」
「ルーちゃん、何か分かったらすぐに伝えにいくね」
「え、ちょ、みんなまっ…」

ルーシィ、ナツ、ハッピーを残し群集はあっという間に去ってしまう。次いで「オイラもウェンディたちと街の子供たちにきいたりあの亀について調べてくるねー」なんて羽ばたき去る。…少しの沈黙のあと、ナツがばぁさんにならなくて良かったじゃねーかなんて真顔で呟いたもんだから、ルーシィは尾ひれアタックを顔面にお見舞いした。













仕方なくも歩けないルーシィを家まで抱えて連れて行く。途中やれ人魚だ人魚姫だと道中騒がれつつもやっと部屋のベッドについたころには、ナツはヘトヘトというような顔をし「重すぎだろ」と暴言を呟いてまたルーシィに殴られた。正直な所、嫌でもあたる貝からはみ出しまくった豊満な胸が身体にあたったりして心臓とか下の方とかが色々疲れたのだ。とても。

「人魚なら水の中で息できんのか?」
「ジュビアに試されたわ。できたわよ」
「そりゃスゲェ、人魚いいなぁ」
「あんたがなれば良かったのに」
「今からでもなれっかな!」
「あんたねぇ…」

事の重大さに全く分かっていない男にルーシィは頭痛を覚える。いや、この手の頭痛は日常茶飯事なのだけど。でも、もしかしたらずっとこのままかもしれないのに、そしたら今の生活はもうできなくなってしまうじゃないの。

「そしたらルーシィとおんなじだしな!」

楽しそうに言ったナツにルーシィは目を見開いて笑ってしまう。あぁ、ナツと一緒ならきっとどうなっても大丈夫だろう、と。
















ヒラリ




と、ナツが自分もなれないかと手にとったあの玉手箱のような箱から何かが落ちる。それを拾い上げたルーシィは目を見開いて叫んだ。


「取り扱い説明書?!」



そこには要約するとこのような事が書かれてあった。〔新商品:魔法の人魚姫☆12時までに王子様にキスして貰えば魔法が解けるよ!でもそうじゃなかったら…人魚姫は泡になっちゃうよ〜〕どんだけネタを混ぜてるんだシンデレラか眠り姫かとツッコミを混ぜつつもルーシィは顔面は蒼白だ。だって泡になってしまうってことはつまり。

「こんな危険な商品があってたまるか!」

愕然とベッドに突っ伏しながらルーシィは最後の力を振り絞り半泣きツッコミをした。泡になってしまうってことはそう、死んじゃうと等しいようなものじゃないか。こんな下らないことで命を落とすなんて嫌よ私はまだやりたいことが沢山あるんだから、ほらたとえば小説家にもなれてないし結婚だってしたいじゃない!ごろんごろんと負の思考回路を続けるルーシィをよそ目に、ナツはルーシィからその紙を取り「なんだ」と呟いた。

「キスすれば元に戻るんじゃん」

簡単じゃないかと呟く。その声に「あ、あのねぇ」とルーシィはキスという気恥ずかしい単語に少々頬をピンクに染めて反論する。

「キ、キスって誰が」
「俺が」

即答され、ルーシィは頬を一気に真っ赤に染め上げてプシュッと沸騰した。確かに確かにキスしないと泡になってしまうわけでしなきゃ死んじゃうんだけどそうだとしたらファ、ファーストキスなわけであってしかもその相手はナツでそのえと、つまりうわぁああと思考回路が今度はショートするルーシィ。

「お、俺じゃイヤかよっ…王子様」

いつの間にか照れたように頬をうっすら赤くし気まずそうに目線をそらすナツ。それに気付いたルーシィは目を見開いた。

「あ、あんたでも恥ずかしいんだ」
「悪いかよ!」

照れたようにではなく本当にナツは照れていた。そんな姿にルーシィは先程までの自分を棚上げにして笑い「可愛い」と漏らす。おいおい男に向かって可愛いとはなんだ、というか昔からよく可愛いとエルザやらリサーナやらミラやらにからかわれるだけあってナツはとても腹をたてて強引にルーシィの肩を掴んだ。

「ちょっ、ナ、ナツ…」
「俺はルーシィに泡になられたら困る」
「っ、私もなりたくないわ」

掴んで自分の方にルーシィを向けたはいいものの、思った以上にルーシィの肩は細く柔らかく、ナツは先程の気恥ずかしさを思い出し、さらにトクントクンと動悸が混じった。

「…俺でいいか?」

らしくない。さっきまで強引だったくせに、しゅんと目には見えない耳がうなだれているようになったナツの様子に、ルーシィも少し落ち着いてきた。女の子にとって、ファーストキスってとっても大切なものなの、でも。



「ナツならいいよ。」



夢みたり理想に描いたような王子様に全く似ても似つかないけど、でも…ナツなら








































思った以上に気持ち良くて、ついつい深くしてしまって怒られた。癖になりそうだ

































怒って離すとみるみるうちにナツが下の方をみて真っ赤になるので何事かと自分の姿を見たら全裸だったわけでつまり絶叫















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次の日亀は実は化けた玩具のセールスマンで実験的に海でみつけたナイスバディな女の子に例の箱をプレゼントしていたとか。そんでもってナツとファーストキッスしてしまったと周囲にバレそうになってあたふたした(バレバレ)所にあの紙の裏には小さく注釈で(12時になったら元に戻れます)なんて書かれていたわけで裸まで見られたルーシィはもの凄く凹んだ。凄く。
しかしそんなことよりも、あれ以来色恋沙汰には全く無頓着だったナツがついに意識しだしたわけで、はた迷惑な亀の売れない新商品も少しは…いやかなり役にたったようだった。



















2012/2/19
一周年記念リクエスト「人魚姫ナツルー」
forすももさま

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しまった!声が出なくなるネタを入れてなかった!

と、パロディはできませんでして(は、はじめは書いてたんです…)一周年記念とかいってリクエスト募集してからもう半年たってますし随分と遅くなりました。人魚姫パロ…できなくてすいません。書いてたんですよ。人魚のナツとお姫様のルーシィ(そっから設定がおかしいだろ)…でも私の力じゃかききれなくて、こちらのネタに。思いっきり遊んで書いてしまいました。すももさん如何でしたでしょうか…っ。これからもlapiusをよろしくおねがいします。

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