微かに漏れた音楽に身を任せて、手をとったルーシィの腰をとって、2人で好き勝手踊る。だんだん、それが楽しくなってくる。

「ルーシィも踊れるんだな」
「何よそれ!さっきの見てたでしょ?」
「もっと凄いの踊ろうぜ」
「え、ちょっと待って、何するつもり?!」

いつものルーシィが目の前にいて、すぐそばにあって一緒に踊っている。リズムもステップも無視をして、ルーシィを抱き上げて回転をする。ルーシィはやっぱり期待通り、大騒ぎをして、顔を真っ赤にして抗議の言葉を連ねた。

さっきは見つめられて、そらされた。そしてとても胸の奥がざわついて、モヤモヤした。けどいまは、ルーシィはこちらを見つめて顔真っ赤にして、生き生きと喋る。それだけでとても満たされた気持ちになって、なんだかとても嬉しくて、思わず思いきりルーシィを抱き締めてしまった。

「えーと、こうゆーの、なんていうんだっけ」

今の気持ちをなんだか伝えたくて、言葉を出そうと考える。楽しいのは確かだけど、それ以上に楽しいし、嬉しい。すっぽりと腕の中にルーシィを収めて、充実感に満ちていて…これをなんていうんだ。

「ちょ、ちょっと、苦しいんだけど!は、はなしてよ!」
「やだ」
「まったく!」
「すきだ」

そう、口を思考より先についてでた言葉。胸の中でルーシィが急に静かになって、微かな音楽だけが流れでて────やっと思考が追いつく。

ナツは赤く沸騰して、慌ててルーシィを離した。口から零れた言葉は、なんて滑稽な程単純で、納得がいくことなのだろう。

「あ、え、あっと」

一度言った言葉は、何度も何度もリフレインし、頭の中が、ルーシィが好きだと言わせている。全ての行動が、立証している。

「え、えーと…」

ルーシィも顔を真っ赤にして、こちらを見つめてきて、思考回路は完全にショート寸前で


「どぇきてぃるぅ〜!!」


夜空に響きわたる巻き舌風の言葉が、華麗に終止符をうった。



























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無自覚症候群

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