なんとか流星群がやってきて、流れ星がたくさん見られると、ルーシィが新聞を片手に大騒ぎをしていた。星霊魔導師というだけあって、ルーシィは星に関することには詳しいし(星だけじゃないかもしれない)、嬉しそうに話すルーシィの熱は、やけに熱い。その熱さが星…自然と連想される彼女の星霊に注がれるような気がしてなんだか気に入らない。

「その日は見晴らしの良いところに行ってくるわ!」

高らかに宣言して、ミラがそんなルーシィに、「それじゃあ夜食を用意するわね」と笑う。
「見晴らしの良いとこっていやあどこだろうなぁ」
「ギルドの屋上でも十分なんじゃないか?」
「空を飛べばいいと思う!あい!」
「ルーシィを星流れてる間中背負うのか」
「それは遠慮します!オイラの羽がもげちゃう!」
「どういう意味かしら猫ちゃん〜?」

ギルドの皆がルーシィの持ってきたこの話題で各々、どう見ようかと話し出す。ふと、見晴らしの良い場所といわれ、思い浮かべたのはマグノリアから森を抜けた所にある場所…

「ルーシィ。俺、いいとこ知ってる」

「本当?!」と期待通りに食いついてきたルーシィに、その日の夜に連れていく約束を取り付ける。
いつもは仕事以外約束なんてしないで、ルーシィと出かけるけれど、約束をして出かけるのは珍しい。なんだか気恥ずかしい気がどこかしたけれど、ルーシィがギルドにやってきて、一緒に行動しないことの方が少ないくらいなのだから、いつものことだ。










 いつものことなのに、そのなんとか流星群の日。待ち合わせをしたルーシィがやけにキラキラして見えた。月の光に反射したルーシィの金色の髪が光ってるし、ルーシィはいつもと同じような露出が高いくせに色気のない格好のはずなのに、なんだか…可愛い。

「あれ?ハッピーは一緒じゃないの?」
「シャルルたちと女子寮の屋上で見るってよ」

そのこと、ハッピーもいないこともあって、二人きりという言葉が脳裏を掠める。なんてことないはず。いつもどおり。のはずなのに、なんだか胸の鼓動が煩い気がする。
おかしな自分を認めたくなくて、頭を振り、ルーシィの手をとって踵を返し、駆け出した。

「ちょっとナツ!いきなり走らないでよ!」
「早くしねえとそのなんとか流星群、はじまっちまうんだろ?」
「もう!」

全速力じゃなくて、少しだけ、ルーシィの走る速さにあわせて駆ける。
なんやかんやと、喚いたり騒ぐルーシィにボケて合いの手をいれて、突っ込まれる。森を抜けて、目的地まであと少し、楽しい。凄く楽しくて、嬉しい。











ぜえはあと肩で息をするルーシィは、膝に手をついて呼吸を整え、開口一番。

「こんな遠くだなんて聞いてない!」

「たいした距離じゃないだろ?こんなのいつも仕事とかで歩いてんじゃんか。」
「そういう問題じゃなーい!この距離じゃあ帰ったら朝じゃない!」
「あ、流れ星」
まだまだ文句が続きそうな所に、タイミングよく星が流れた。それを合図にしたように、360度、遮りのない、満天の星空に、どんどんと星が流れ出す。
歓声を上げ、言葉を失う。なんとか流星群とやらは、思っていた以上に凄い。

「これだけ流れてたら、願い事の一つも叶いそうね。」

瞳をキラキラとさせたルーシィが呟いた。

「ナツがイグニールに会えますように」
「…自分のこと、願わなくていいのかよ」
「いいのよ。私は今、凄い幸せなんだから。」

満面の笑顔で、幸せだと言ったルーシィは、やけに綺麗だ。沢山流れる星にも吃驚したけれど、この笑顔の綺麗さの方が吃驚したらしく、心臓が煩い。

「ナツも願い事したら?」
「……」

ルーシィが、イグニールに会えるように願ってくれた。だからきっと、俺が星に願わなくても、叶うだろう。だったら他の願い事を願おう。そう思って、考えて…

「……」
「ナツ?」

黙する自分を疑問に思ったのか、下から覗き込むルーシィ。じっと見つめてしまう。そして…ストンと、自然と出てきた願い事。

“ずっと一緒に、ルーシィと”

この時、初めて自覚した。今まで気づかない方がおかしかいくらいのことを。そして気づいた。下から見上げるルーシィの、その瞳の中に映る自分の瞳が、火をだしていないのに、熱いことに。

(離れたくない。ずっとこのまま。帰っても一緒にいたい。そうずっと。自分の隣にいればいいんだ。)

流れ星よりも高速に、ナツの脳内で駆け巡った思い。単純すぎるソレは、ナツの神経ではとりこぼしてしまっていたことに、やっと気付いた。

「ねぇ、願い事は?」

当然のように懐に収まった感情の名前が、じわりと緩やかで温い…だが、一瞬の炎よりも熱く、続き、燃え盛るのを感じる。
不思議そうな顔をしたルーシィの瞳と目が合うと、沸騰したように、自分の意志とは関係なしに、体が熱くなる。目を逸らして、上空の星をみつめた。
それに合わせるように、ルーシィも空を見つめる。

「ルーシィ」
「なあに?」

「ルーシィが、大口あけてバカみたく笑って、元気に過ごしてますように!」

そして、その隣には当然、自分がいるということを。





星に願えば


















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ティンクルティンクル

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