「お、ルーシィ発見」

ナツはやっと見つけた淡い金色の少女の元へ楽しそうに駆け寄った。

「なにか用?」

随分と分厚い本を、木陰で読むルーシィの返答は素っ気ない。

「いや、別に用はないんだけどよ」
「ふうん、邪魔しないでね」

ルーシィの大きな瞳は、本に向かったまま。随分と集中しているのか、顔を上げない。彼女の優先順位が、今日はどうやら自分より本の方が上のようだ。つまらない状況にナツは少しふてくされるが、彼女の姿を一瞥し、いいことを思い付く。

「!?ちょ、ちょっとナツ」
「本読んでろよ。」

ナツはごろんと、留守だった彼女の膝に寝転がったのだ。案の定慌てるルーシィに「ルーシィの大好きな読書の邪魔する気はねえよ」と釘をさして、心地よい柔らかな膝の上、瞳を閉じる。

「バ、バカじゃないの。こんなんじゃ気が散って読書できないわよ!」
「これくらいでルーシィが動じるわけないだろ?大丈夫だって。それともルーシィはそんな集中力もないのか?」
「〜っ」

ルーシィはナツの挑戦的な態度に唇を噛む。頬を赤らめ表情を引きつらせ本に視線を戻す彼女にナツは満足そうに小さく頷く。


青い空、そよぐ風。おまけに、思った以上に頭の下が柔らかい。一番寝心地のよいところを探して、満足する。

「…。」
「………」
「…っ。やっぱりだめ!ちょっとナツ、どいてよ!」

太ももの上に異性の頭を載せる。しかもルーシィの短いスカートでは殆ど素肌の上のようなものだ。初めは挑発に乗ったものの、ウブなルーシィには、もぞもぞと動く桜色の頭がくすぐったくて、恥ずかしくて、堪えきれず音をあげた。

「イヤだよ。折角、気持ち良いのに」
「〜〜っ」

ナツの聞き方によっては意味深な発言に、ルーシィは頬を赤らめながら、また唇を噛む

「いい加減にしなさいよー!なんなのよ一体!これじゃあ邪魔してるっていってんのよっ!」
「…」

ルーシィが揺れながら騒ぐ。だが、そのせいで眼上で揺れるルーシィの柔らかな脂肪に目を奪われ、ナツはそれどころじゃなかった。

(近くで見るとよりすげぇな)

思わず触れたくなる衝動に駆られるが

「聞いてんの…ナツ?」

タイミングよくルーシィの冷たい声音が響きドキリとする。

「うっせぇなぁ。寝たいんだよ俺は」
「じゃあここじゃなくてもいいでしょ」
「やだ。ここがいい。」

まるで拗ねた子供のような声音をあげるナツに、ルーシィはなんだか可笑しくなる。意固地になったナツを動かすのは難しい。

「子供か。」
「ガキあつかいすんな!!」

大きな声で、動揺したように起き上がりナツはルーシィを睨む。膝は解放されたが、今度は視線に捉えられ、ルーシィはまた恥ずかしくなる。だが、先程のナツの反応は、何時もの反応よりも大きい

「何かあったの?」
「何もねぇよ。」
「ガキ」
「!!」
「だって馬鹿にされたのね?」
「…っ」

どうやら図星らしい。ナツがギルドで子供扱いをうけるのは、ギルドで弟のような位置にあるため珍しい話でもないはずなのに、今日は随分と気にしているようだ。

「だれに?」
「…………っ、ハッピー」

ふてくされたように唇を尖らせて出た名前は、なんてことない。ナツの相棒の青い猫だ。思わずルーシィは吹き出す。

「笑うなよ!」
「いやだって…まるで子離れできないお父さんみたいよ?」

ここ最近、いや以前からだが、ハッピーはシャルルにお熱だ。シャルルがくる以前は、ナツの隣には当然のようにハッピーがいたが、最近はシャルルとウェンディと一緒にいるため、きっとナツはハッピーにかまって貰えないのだろう。

「…子離れって」
「いや、親友に彼女ができて、相手してもらえない少年ナツくんってのが打倒かしら?」
「…少年じゃねぇしっ」
「そういうとこがガキだって言われんのよ」

してやったり、先程の膝枕の反撃までとは言わないが、ルーシィはしたり顔でふてくされたナツの横顔を見つめた。

「っていうか。大人ってなんだよ」

ため息をつくようにナツは芝生に寝転がった。木陰でも、太陽は眩しい。地面は先程のルーシィの柔肌と比べ、全然気持ちよくない。

「ハッピーのやつ…恋したら大人になるとでも思ってんのかよ…」

空に吐き捨てるように言うナツに、ルーシィはなんて答えればよいか悩んだ。人はいつ大人になるのか。体は年をとれば自然と大きくなる。だから変わるものは確実にあるけれど、だからといって完璧な大人という答えがルーシィには見つからなかった。だが、大人と思える人はいる。

「私もわからないけど…そうね、子供でもできたらわかるんじゃないかしら?」

親心=大人とは思わないけどね。と零して告げると、ナツは起き上がってルーシィを見つめた。

「ルーシィも子供できんのか?」
「はぁ?…い、いつかは出来るんじゃないかしら?」
「……」

ナツも、ルーシィも頬がほのかに赤い。子供ができたら…そう考えて、ナツは自然とルーシィとの子供を思い浮かべたのだ。流石のナツも、その意味をわかっている。

「……」

金色と桜色が風に揺られてふわりと流れる。木漏れ日は二人を暖かく包み込んでいる。

「なあ、ルーシィ」
「なあに、ナツ」
「ずっと一緒にいような!」

ぴたりと、心臓が止まるような台詞に、ルーシィは目を開くが、ナツの全てが馬鹿らしくなるような、気持ちのいい笑顔に

「うん」

笑顔でそう答えるのだった。


















木漏れ日
「にしてもルーシィ、膝枕またしてくれよ」
「な、なにいってんの?!ダメに決まってんじゃない!」

























.
いい加減lapiusのナツルーも関係を動かす2人を書かなきゃと四苦八苦してるんですが進展しませんよ…ま、まぁ膝枕させるという目的が達成できたからいいよねー!

- ナノ -