優しい香りのフレーバーティー。甘い口どけの美味しいお菓子。お気に入りのティーセット。
それらを一瞥し満足そうににルーシィ・ハートフィリアは頷いた。あとは窓からの不法侵入者が来れば楽しいティーパーティー。
「あたしったら何してんのかしら」
思わず苦笑が漏れる。手に取る色違いのティーカップは今や彼女と彼の専用になってしまった。お客様用に、と思って買ったはずなのに、いつの間にか彼専用にしたのは他でもない自分で、気恥ずかしい。彼の相棒用の少し小さなティーカップも用意してしまった自分は、どうやら随分と彼らとの生活に侵されてしまったらしい。
色違いのティーカップに小さなティーカップ。三つが並ぶとなんだかまるで家族のようで…頬に熱がたまるのを感じる。
「ほんと、何してるのかしら」
あの桜色の頭をした、やることなすことハチャメチャで、単純で天然、発言は生意気だし失礼だし、男女の機微なんて何一つわかっていなさそうな彼と、どうこうなろうなんて予定も希望もやる気もない。
それでもこんなにも当たり前になった、なんでもない些細な温もりは、今までハートフィリア財閥のお嬢様という豪華な独房にいた彼女にとって、あまりにも大切なものになってしまっていた。
だから、彼女がずっと続くようにと願ってしまうのは無理もない話で、彼はもう彼女のパーソナルスペースにあまりにも踏み込みすぎで。
がたっと、窓の方から音がして、それを合図に深呼吸。
「よ!」
「あい!」
「不法侵入ー!!!!」
彼女が不法侵入と怒るのは、最後の彼女の砦。もし、遠くない未来、彼が彼女のそばからいなくなってしまった時の為に彼女は怒る。
お菓子と紅茶と彼が好き
(この瞬間がいつまでも続けばいいのに)
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こういう幸せには受け身になってしまいがちルーシィ。