いい気分だ。
 
柔らかく光る金髪が鼻を掠める。
揺れる瞳を見つめる。彼女の中には自分しかいないことに、高鳴る鼓動。柔らかい肢体が身じろぐ。
 
(どうしようもなく、好きだ)
 
衝動に駆られる。熱を感じて、彼女の名前を呼んで、柔らかいその唇に─────







「いたいたいたい!ナツ!いたいってば!」
「ん…?」
「ナツのばかーっ!離せ!」
「…あれ?ハッピー…?」
「あれハッピーじゃないよ!オイラのことルーシィと勘違いしてさぁ!もうオイラ、オイラのはじめてがナツに奪われるんじゃないかってヒヤヒヤしたよ!オ、オイラのはじめては絶対にシャルルとなんだから…!!もうナツなんてサイテーだー!」

うわああんと泣きながら怒ったハッピーは翼を広げ、家から飛び立ってしまう。ナツはなんのことかわからず首を傾ける。ただ凄くいい夢をみていたのに、今ので完全に吹っ飛んでしまった。多分寝相の悪さを発揮して、ハッピーを抱き枕にしたことでハッピーがキレたのだろうが、何がはじめてでどうしてサイテーなのか、ナツにはちんぷんかんぷんだった。

「んー。すげぇいい夢だったのになぁ…思い出せん」

頭を掻いて、もう一度思い出そうとしても、猫よりしょぼいとハッピーにいつもいわれるナツの脳味噌は、うんともすんとも言わない。

仕方なくナツは立ち上がって、顔を洗い、身支度をして、ギルドへ向かうことにした。とりあえずハッピーもギルドにいるだろうし、寝相の悪さについては謝らなくてはならない。









「もうね!ほんとさ!ありえないんだよ!ナツってばさ!」

ナツは、ギルドに着いて周りを確認する。ルーシィはまだきていない。ハッピーが何か言いふらしているのが聞こえる。先にきていたギルドの仲間たちは何故かニヤニヤとしながら

「おはよう。良い夢みたんだってなぁ」

と、何もかもわかったような口振りでからかってきて、なんだかイライラする。良い夢を見たっていっても、何も覚えてないんだから意味がない。

エルザやウェンディにジュビア、ミラにエルフマン、そしてリサーナとレビィにガジル、勿論リリィとシャルルを囲んでハッピーが演説をするように机の中心で喋っている。煩いギルドの建物の中、自慢の竜耳を澄ませてみれば

「それでナツってば、寝相が悪いのはいつものことだし、寝言もよくあることだけどね、今日は本当に酷くてさ!」
「いきなりきつく抱きしめられたかとおもったら舐められてね!しかも肉球!肉球だよ!」
「それであのナツがさ!甘い声で"ルーシィ"なんて呟いて!もうほんとさっさとルーシィん家いけってかんじだよね!」
「いくら呼んでもなかなか起きないしさ!ヒゲはぬけそうになるし!おきたかとおもったら笑ってんだよ!目閉じたまま!」
「オイラもう身の危険を感じるからナツと一緒に住める気がしないよ…!」

ハッピーの話をきいたリサーナは「可哀想なハッピー!いつでもうちにきていいのよ!」とハッピーを抱きすくめ、それにあいずちをうつようにミラも「ごはんもベッドも用意するわ」と同意、エルフマンは漢だと叫びながら何故か泣いている。エルザもハッピーに同情し「いつでもこい。それにしてもナツのやつそんな不埒な発想をしていたとはな、一度成敗せねば」と危ないことを言い、ジュビアに至っては話の内容を勝手にグレイとジュビアに置き換えて妄想している。その話と様子にレビィやガジル、ウェンディたちは苦笑いを零した。


少し鼻づまり気味の声のハッピーの語りをきいたナツは暫く頭が真っ白になった。気配すら無くした。そして突然、一気に汽笛のような音をだし、炎ではない熱に全身を覆われる。そしてそのまま、流星よりも早くギルドから姿を消した。







は雄弁に語りかける
全て思い出すように、何もかもわかってしまった彼はもう、誰にも止められない。
(誰とキスしたい?君しかいない)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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自覚話がかきたくて、きっと無自覚ウブナツなら夢のほうが真実だと思ったんですが…ただのハッピーの受難話になりました……

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