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今日も迷子二人を探して駆け回った富松作兵衛が帰ってきた。今日の作兵衛の姿はボロボロで、怪我をしていた。彼をいつも治療する三反田数馬が学園の門の前で迎えて、「どうしたの?!大丈夫?何があったの?」そうきくと作兵衛は苦笑しながら「ちょっと三之助と崖から落ちそうになっちまって」と言うので、数馬はなんてことだと目を見開いた。でも次の瞬間数馬の足元が崩れる。

「うわあっ!!!」
「っと、あっぶねぇ」

とっさに数馬の腕を掴んだ作兵衛は、軽々と数馬を引き上げる。「数馬の不運で出来ちまった怪我よりかは、少ねえよ」と言って数馬が昨日作った指の傷と頬に出来てた傷を優しく触って、ニカッと笑うので、思わず数馬は見惚れてしまうのだ。

しばらくして「ごめんね」と呟いた数馬に、作兵衛は目を見開いて「は?」と気の抜けた声がでる。

「ほら、僕保険委員だから、いつも用具委員の作兵衛まきこんじゃうじゃないか」
「なんだ、そんなこと気にしてんのか?」

(そんなの、あの迷子たちに比べれば可愛いもんだぞ。)と小さな声で耳打ちした作兵衛に、またしても思わず固まってしまう数馬。

(ほんとに、作兵衛はズルい)

数馬は心うちで呟き、どうにかして作兵衛を振り向かせられないかどうか考えるのだ。いつも。









「さくちゃん、保健室いこっか」
「おお、つかいい加減さくちゃんてやめろよ。恥ずかしいじゃねえか」
「いーの!」














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