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「夢だったんです。」だなんて綺麗に泣く可愛い後輩。潮江文次郎は平静を装いながら狼狽えた。

会計委員会は今日も10キロ算盤を片手に頑張っていたのだが、様子の可笑しい田村三木ヱ門に潮江は気付いて、気になってしょうがなかったので算盤をおいて「今日はここまでにしよう」と解散し、帰り際に反応の薄い三木ヱ門に声をかけた。

「どうした」「何かあったのか」そう聞くと三木ヱ門は首を横にふり「なんでもありません」と小さな声で言う。先輩がどこまで後輩のことを気にしていいのか潮江の頭の辞書には記されていなかった。だから潮江は言葉を発せられずに固まった。

(どうみても大丈夫じゃないだろう)
(こういう場合どうすべきなのだろうか)

悶々とするうちに三木ヱ門が自分を見つめてることに気づいた潮江は、「なんでもなくていいから、何かいってみろ」とぶっきらぼうに思わず口にだしてしまった。
すると三木ヱ門がボロボロと泣き出した。



三木ヱ門の「夢だったんです」と繰り返しながら涙を流す姿は可憐で、潮江はなんとしてでも助けてやりたいと強く思った。ああ夢とはなにか。











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「サチコが故障する夢が本当になってしまって」



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