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※成長。死ネタ含



昔むかし───
剥がれない面を被る青い狐がいたそうだ。












水浅葱の着物で囚人になりすまして、潜入捜査を行う。鉢屋三郎の任務だ。もう忍術学園を卒業し早幾とせ、もう何人に変装しただろうか、自分がかつてのように不破雷蔵に変装することも、他の学友に変装することもない。時の流れは、あの頃のことをもう思い出とし霞かけていた。
「なあ、もしかしてさ。お前三郎か?」
「?!」
悪人だらけの鉄格子の中。誰にもわからないだろう自らの名前を呼ばれ唖然とする。驚いて振り向くと、そこにはボサボサの髪で、無精髭を生やした男がいた。
「違うかなあ?」
「…八…?」
「そうそう俺は八左ヱ…てやっぱり三郎?!」
「しーっ…今の名前は三蔵だ。」
「え、任務中?」
「お前こそなんでこんなとこにいるんだよ…まさかマジで囚人なわけ?」
「んーま、そんなとこ。」
「そんなとこって…」
以前のように快活なのは変わりないが、なんだか読めなくなった竹谷に鉢屋は戸惑った。やはり時間というものがたったのかと納得した。
「なんか雰囲気変わったなお前」
「そりゃあお前もだよ。」
「はあ?」
じゃあどうして俺だとわかったんだ?と聞けば、癖がね。と答えた。
「考え事をすると、雷蔵もお前も耳の裏触るんだよ。」
「え、まじか」
「お前気付いてなかったのかよ?!てっきり三郎が雷蔵の真似してるかと思ってたのに」
苦笑いして応対する。それに笑う竹谷の笑顔はやっぱり懐かしかった。そうして次に片割れがいないのがやっぱり惜しまれる。
「雷蔵はどうしたんだ?」
「知らない」
「知らない?!」
雷蔵とももう全く会っていない。
「そっちこそ兵助は?」
「ああ…あいつはフリーの忍者してるぜ、たまに会ってる。勘右衛門は東国の城で結構活躍してるらしい」
「お前はなにしてるんだ。」
「え?あー…漁師の手伝いとか〜畑の手伝いとか〜たまに忍術学園の手伝いとか色々やってる」
「はあ?!忍はどうした」
「たまにしてる。」
「…お前は獣使いとか城でやってるかと思ったぜ」
「やってたさ〜だけどな。やめた」
「…」
何が理由か知らないが、遠い目をしている竹谷に、聞いてもやぼだと思った。
「つうかお前任務いいのかよ」
「…もう終わる」
はあ?!と目を見開く竹谷に、俺は立ち上がって牢をあける。
「ラッキーだったな、殺されなくて。まさかお前が巻物隠しもって抜け出した抜け忍だとは思わなかったよ」
「つうことは、やっぱお前がこれを渡すべき相手っつうことか」
竹谷も立ち上がり懐からとても小さな巻物をとりだす。隙間から見えた水浅葱色の着物の裏は赤黒かった。


二人して牢屋から抜け出した。沈みかけの夕日に、暗い所からでてきた目が霞む。
「お前、雷蔵だろ」
「…雷蔵はいない。」
「三郎はいないんだな」
「俺が、殺した」
「…実をいうと、さっきの嘘。兵助は、死んだ。」
「そうか」
「ま、相手がお前で驚いたよ。」
「殺す相手でなくてよかったよ。」
「じゃあな雷蔵」
「三蔵、だ。」
笑って手をふる竹谷の浅葱色も、自分の浅葱色も、夕焼けに溶けて、真っ赤に染まっていた。








浅葱色に染まる
罪の衣を纏った狐は、かった













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