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じわりと肉体から染み出た汗がぬらりと肌を伝う。それだけでも鬱陶しいのに、ミンミンと壁越しの木から響くけたたましい蝉の泣き声は、違う時ならば風流ともとれるが、今は苛々を余剰させるものにすぎなかった。

「笑えるな。」
ニヤリと形のいい口角をあげて六年も共に過ごしている同室のよしみの立花仙蔵は、潮江文次郎を見下した。文次郎はというとじわりと汗を額に流しながら隈の跡が残った目を苦痛で歪ませ、自分を見下す相手に溜め息をこぼした。
「なんだ、つまらないな」
「お前は暇なのか」
「暇は作るものだろう」
「なぜ俺に構う」
飄々としたいつもの調子でああ言えばこう言う仙蔵に、床に伏せる文次郎はハッキリした口調で疑問を唱えた。例えば今、通常の日々ならば(ただの暇つぶし)だと割り切れるが、戦乱に六年生は駆り出されているはずである今、怪我と病で伏せる潮江文次郎以外にこの静まり返った六年長家にいるのは可笑しな話なのだ。
「怪我でもしたのか」
「・・・」
「病気か」
「・・・」
黙ってしまった仙蔵から、汗が零れた。その水分が文次郎にふりかかり、それが、涙だとわかった。
「殺したのか」














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逃げるために零した滴は、もう



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テーマ「人外ファンタジー」
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