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 血だらけになった富松作兵衛が戌の刻が終わる頃帰ってきたという知らせが三年長屋にひっそりと届いてきた。当然先生や保険委員が彼を介抱している中、僕は何もできずただ神に頼むというやるせないことしか出来ない。
勿論左門や三之助という作兵衛の同室のよしみで親友でもう家族のような彼らだって当然のように心配をして神頼みを必死にして僕と同じだ。でもどうしてか僕の行為はそれに叶わない気がして、やるせなくて。そんなこと気にしてること自体にも苛ついて、やっぱりへこむ。


「作兵衛もういいのか?」
「大丈夫だってーの」

 二週間して出てきた作兵衛は怪我する以前と同じように動いていた。でも首や腕からはみ出る包帯がやはり痛々しい。どれくらい酷いのか作兵衛の素肌を見る機会のない僕は知らない。数馬は作兵衛の包帯をかえてあげてるし、左門や三之助は同じ部屋だから知っている。あと孫兵も作兵衛よりは酷くないが少なからず怪我をして保健室によくいるから知っていると思う。

「そんな顔すんなよ」
「えっ?」
「こっちの方が痛ぇよ」
「は?」

頭を掻いた作兵衛は急に近づいてきて僕の頬をいきなり引っ張ってきた。「にゃ、にゃにしゅるんだよ」と呂律の回らない言葉で怒ると彼はまたもや急に快活に笑って「藤内が元気じゃないと傷より痛ぇ」とわけのわからないことを言う。












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君を思うと見えない血が流れ出る夢をみた



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テーマ「人外ファンタジー」
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