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 まさかこんなことになるとはって、それなりによく働く頭の中は事実は認識してるけど、感情が理解していない。


朝目覚めたら未夢が騒いでいていて、赤ちゃんが飛んでて、犬か猫かわからない変な生き物がうまい朝飯を作ってくれる日常。それが当たり前になってしまった。

「彷徨ぁー!」
「なんだよ未夢、また何かやらかしたのか?」
「何かって何よ!まるでいつも私が何かしでかしてるみたいじゃない!」
「事実だろ?」
「な、な〜によなによ!私ここきてまだ二ヶ月しかきてないのよー?!」
「あれ、そうだっけか?」
「そうよ!だからわかったようにいわないでよねー!!」
「へいへい」
「あのねー聞いてんのー?!」

そうか、まだそれしか経っていないのか、未夢とはなんだか大分前から一緒にいる気がするくらい、自然にいる気がする。いや、でもちょっとまて、俺ってちょっと前までこんなんだったか?

「ねぇ彷徨。今日の晩御飯何食べたい?」
「・・・・まさか、お前つくんの?」
「なによー、悪いの?!だってワンニャーが愚痴零して・・」
「仕方ねえなあ〜。一緒に作るか!」
「え、ホント?!」
「お前の飯じゃあなあ〜」
「な、なによー!何がいいたいわけ?!そりゃ下手かもしれないですけどね〜ですけどねぇ〜えーえー下手ですよ下手ですよ料理下手ですよ〜」
「何勝手にへこんでるだよ」
「ぅぅう」
「ほら、早く買い出しいくぞ、晩飯遅れないようにしなきゃなあ。」
「ちょっとぉ待ってよー!」
こんな風に未夢と買い物して一緒に家事して、一緒に飯作ったりして、喧嘩したりするのは、結構、楽しい。
それと、未夢に名前を呼ばれるのが結構好きだ。
「で、何作る?」
今みたいに笑顔で笑った顔も好きだったりする。実は結構可愛いと思う。学校のクラスの俺に付きまとう奴らとか、その他の女子の中でも、実は結構可愛いと思う。本人気付いてないけど。
「かぼちゃ」
「相変わらず好きですなあ〜」
「そりゃあな」
「なんか彷徨といると、かぼちゃ料理ばっか作れるようになってく気がする」
「そういうことは、一人で作れるようになってから言おうな。」
「む、む〜!いつか、絶対、彷徨を唸らせる料理作ってやるんだから!」
「そりゃあ楽しみだな。」

やり過ごしてるけど、こいつの言ってることは、結構ドキッとさせる。今のだって、ずっと料理してくれるくらい近い位置に俺といるって解釈もできる。そうなればいいだなんて、思っていることに俺は気付いて・・・やっぱり、この感情の行方があいまいだ。


ちょっと前まではたしかに毎日が平坦だった。親父がいるときは親父と家事して静かな生活、親父がいないときも一人で静かに生活。学校も、女子はうっとおしいだけだし、少なからず楽しみといえば本を読むか、三太の突然の誘いにのったりするくらいだ。

「ねぇ彷徨、結局メニューはどうするー?」
「んーかぼちゃの〜パスタとか?たまには」
「おお!和風好きの彷徨が珍しい!」
「かぼちゃだから和風パスタだけどな」
「彷徨ってホント料理上手だよね・・・いいなあ〜」
「お前も練習すればうまくなるさ。」
「だといいんだけどなあ〜」

そんな生活がいつの間にか未夢がきて、ルゥとワンニャーがきて、ドタバタして、でもあったかくて、なんだかほんわかしたものに急変した。どうやら結構順応性のある俺は、それに対してわりあい慣れてしまった。もしもこの生活が終わってしまったら?そんなこと、考えても仕方がないと、考えることを拒否してしまう。怖いのだ。ずっとずっと、続いてほしいのだ。

「ほい味見」
「うわっおいしーい!!!」
「うんうまい」
「じゃあお皿は、と」

上の方の皿をとろうとする未夢。危なっかしい。俺より小さい背は背伸びをして手をのばす。案の定とったはいいがバランスを崩す。
「あっぶねえな」

すかさず俺は後ろから抱きすくめる。思ったよりも細くて、少しドキりとする。

「お前、本当に危なっかしい」
「う、うるさいわねえ!どうせ私はドジで間抜けです〜!何でもできる彷徨さんとは違うんだもん」

真っ赤になってそういう姿は本当に可愛らしくて、俺は腕の中の温もりを手放したくなくなる。

「パンパ!マンマ!」
「あ、ルゥちゃま!!」

そんなところにやってきたルゥとワンニャー。俺たちは癖ですぐさま離れて何もなかったようにやりすごす。

「すみません未夢さん彷徨さん。お二人のお邪魔を・・」
「いやいやいや邪魔なんかぜーんぜん!」
「も、もう料理できたんだよワンニャー、机に並べるだけなんだよもう」
「ですがお二人凄く仲良しさんで・・・」
「ど、どこが仲良し?!彷徨が私をからかってただけなんだから!ぷんぷんよ!」
「からかってたんじゃなくて、事実をいってたんだ」
「な、なによそれ!」
「お、お二人とも落ち着いてください〜!」

その後4人でご飯をたべて、いつも通り過ごした。ずっと続いてほしい。だがきっと終わりはくる。それでも俺は、この温もりを少なからず守っていきたいと思った。手放したくない。手放すわけにはいかないと。





守りたいもの
クールだなんて戯れ言だ。











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人一倍大切なものへの執着心がある彷徨くんに一票。
そして可愛い可愛い未夢ちゃんたまらない。
何度も見返してしまう大好きなアニメです。



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