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甘いチョコレートのような現実だったら素晴らしいだろう?





例えば自分が狼男ではなかったら、学校にちゃんと通えるんだろうな。そう思うと幼いながらに哀愁を漂わせる少年リーマス・ルーピンは残りヒトカケとなったチョコレートに手を伸ばした。勉強もそれなりに好きで、親も理解がある。されど自分は月に一度必ず狼になるわけで、普通の人間ではない。狼男だ。

幼い日に狼男に噛まれ、満月がくる度に狼になる自分。傷つく母の顔は、もう見たくない。このまま大きくなってしまったら、大切な人を喰い殺してしまうかもしれない。そうでなくとも、自分に噛まれることによって、新たに自分のような人間にしてしまうかもしれない。そんな危険があるような自分は、早く死んでしまった方がいいのではないか。いなくなってしまった方が、みんなが安心して暮らせるだろう?
そう思う度に、自分を噛み、そんな姿で親を何度傷付けただろうか。思い出すことすら億劫だ。


そんな僕に、とんでもなく幸せな知らせが舞い込んだ。狼男の僕が、諦めていた学校に通える?そんなことが現実に起こりえるなんて、なんてうまい話。そんなうまい話があるはずがないだろ?
初めは信じられなかったその手紙も、ダンブルドア校長先生が目前に現れることによって真実だとわかる。

「本当に僕が行っていいの…?」
「ええ、いってらっしゃいリーマス。でもね、うますぎる話には気をつけなさい。何事も慎重に、慎重に。」

狼男の僕がうまくやっていけるだろうか。
期待と不安を胸に、ホグワーツへの扉が開かれたんだ。





「友達ができたんだ、沢山。とくにジェームズにシリウス、ピーターにはとても仲良くしてもらっている。彼らは僕が狼男と知ったら、どう思うだろう。でも、聡い彼らのことだ。僕がどんなにうまく隠したって、時々見透かされている気がするんだ。」

幸福と不安、友情と恐怖に揺れ、僕はふわふわとしたまま、ひたすら流れ続ける時間に身を任せ、月に一度の恐怖に震え、ただただ、いつまでもうまくいくようにと願った。だから驚いたんだ。彼らがアニメーガスとして僕の前に現れた時。

「ずっと練習して、ついに僕らも化けられるようになったんだ」
「どうだ凄いだろ!これで遠慮なくリーマスと月に一度のお泊まり会にいけるな。」
「凄いでしょ!僕にもできたんだ!」

例えばもし、人生の絶頂期があるとしたら。僕の絶頂期はこの時だったろう。












Beware of deals that seem too good to be true.(うますぎる話には気をつけろ)
闇に蝕まれ、苦しむまでのカウントダウンがはじまった



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