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赤と緑に黄金色。立派なモミの木に色とりどりに飾られた見事な飾り。荘厳なホグワーツ城は銀世界の中にしんと立ち、中ではドンパチとお祭り騒ぎ───あぁ、クリスマスがやってきた。

冬休み期間中にあたる今、多くの生徒は実家へと帰って行く。ホグワーツに残る生徒はごく僅かだ。だが人数が例え少なくとも、ホグワーツのクリスマスは遜色なく、寧ろ、そこいらのクリスマスパーティーなんかよりも豪華だ。

「君はジェームズの家に行くと思ってたよ、シリウス」
「そういつもいつも行ったら悪いだろう?夏休みもずっといさせてもらったんだ」

赤と金で、こちらも派手に装飾された部屋で、かっぱらってきたバタービールを煽るシリウスに、その隣でチョコを頬張るリーマス。二人はホグワーツに残った。

「君がそういうこと気にするなんて…」

ジッと、驚いたような表情を、わざとらしくして、「何か病気でも?」とシリウスの額に手をやる。突然の接触にシリウスはビクリと震える。それがなんだか可愛くて笑うと、シリウスは白い頬を赤く染めて「んなわけねぇだろ!」と勢いよく突っ込んだ。

「お前こそ、今日は熱、どうだった」
「大丈夫だよ。」

冬休み、僕が居残ったのは、ここ最近の不調を母親に知られたくなかったからだ。
毎日学業と、友人たちの騒がしさで忙しくも、とても楽しい日々を送っている。手紙にも、学んだこと、友人たちと楽しく過ごしていることを書いているのに、ここ最近狼になった時に大きな怪我をしてしまった。マダム・ポンフリーの処置で、かなりマシになったものの、狼人間の牙というのは、とてもタチが悪い。慣れてはいるが体調も最悪だ。このあいだのまで傷の影響で高熱をだした。こんな状態で、会いたくない。それに…どうせ夏には帰るのだ。数える程しかない、夢だったホグワーツでの日々を、もっと過ごしたい。

「リーマスはやせ我慢するからな。信用できねぇ。ちゃんと何度か計ったか?何度だったんだ?」

イケメンの真剣な表情が間近に迫る。女子なら頬を染めるだろう。だが僕の場合ピキリとなる。シリウスは心配し過ぎだ。

「君は僕の母さんか」
「な、せめて父さんにしろよ。」

つっこむのはそこなのかい?と思わず溜め息を吐いてしまう。シリウスが父親だなんて、絶対鬱陶しいに違いない。顔がよくて優秀だとしても確実に親バカだし、子供より子供っぽそうだ。

「全部声に出てるぞ…俺がパパなのがそんなに嫌か?」
「…まったく。ともかく君は心配しすぎなんだよ。僕はそんなにヤワじゃないよ?」

シリウスは、僕が思うに鈍感で、頭はよくてもバカだ。傲慢だし、満月を面白がったりもする。彼に対して僕は嫌な所がいくらでも出てくる。なのに…それになのに結構気がきいて、心配性なんだ。僕が満月が近くて気分が悪い時も、うっかり怪我をしたときも、上手く隠してる筈なのに、細かいことに気がつく。
そして、彼は優しい言葉をかけて心配してくるのだ。あのシリウスがだ。
以前からそれが、むず痒く気恥ずかしく、少し腹が立つし、ほっといてほしいのにタイミングが悪い。でもそんな所が

「わかってるさ。リーマスはタフだ」

大嫌いなのに、大好きだ。

「自分だって大変な癖に」

シリウスはついにブラック家を出た。それがどういうことなのか、僕はあまりわからないが、きっとかなり大変なことだろう。グリフィンドールになったことも、家をつがないことも。親と決別し、血筋を裏切ることも全部。
シリウスはやっと解放されると喜んでいた。それでも、自分から選んだ決断とはいえ、傷ついているだろう。
こういう時は、僕なんかより、唯一無二の親友であり、ムードメーカーのジェームズといた方が楽だろうに、なんで彼は僕といるんだろう。

「俺はいいんだよ」

ほら、そうやって、自分のことは二の次で、人のことばかり心配して、少しは、僕が心配していることだってわかればいいのに。本当に君は勝手な奴だよ。



















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窓ガラスが叩かれて、振り返るとジェームズとピーターがいた。一体どういうことなのか。クリスマスもイタズラ仕掛け人大活躍だ!なんて意気揚々と作戦を語り出す。あぁ、僕らは、勝手気ままなイタズラ仕掛け人だ。

Merry Christmas 2011



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