私の恋人、バーンは酷く独占欲が強い。
前々から強欲な奴だと思ってはいたが、こんなに屈強なものだとは「恋人」という肩書きになってから初めて知った。
欲しいものは何でも手に入らないと気が済まないのだ。もちろん手に入ったものは絶対に手放さない。
食べ物だろうが、玩具だろうがなんだってそうだ。ジェネシスの座も・・・そして「恋人」も。
ダイヤモンドダストのメンバーと話しているだけで怒られる。
ガイアやプロミネンスならもっての他だ。
一度、チームメイトなのだから話さない訳にはいかないだろうと弁解すると、問題は話していたことではなく「楽しそうに話していた」ことらしい。
そのお陰でバーン以外の誰かと話す時は常に無愛想に振る舞わなければいけなくなった。
ただでさえ感情表現が得意な訳ではないのに、これでは皆気を悪くしてしまう。
と思っていたが、私のチームメイトたちは私がバーンにどのような扱いを受けているか理解しているらしく、バーンがいないときに「大丈夫ですよガゼル様」と囁いてくれた。
よくできたメンバー達だ。皆私を慕ってくれている。
それなのに、あぁ。なぜ私はグランの部屋に向かっているのだろうか。
できる限りバーンに良く扱ってもらえるように、チームメイトが必死に手を尽くしてくれているのにそんな気遣いを無視して・・・。
何の事はない。通信や言伝で済む内容だった。だがわざわざグランを訪ねた。
誰かと話しただけで怒るのだ、部屋で二人きりだったと知ったらどうなってしまうのだろうか。
しかもグランだ。バーンは特にグランに対して対抗心が強い。
廊下をふらふら当てもなく歩く。
いや、正確には目的があってやっているのだが自分から出向くのはつまらない。
彼に見つけてもらいたい。
廊下の奥から慌ただしい足音が聞こえたかと思うと、ひょいとヒートが飛び出してきた。
「あ!ガゼル様・・・よかった間に合った!」
「どうかしたのかい?」
「い、いやあの・・・実はさっき食堂でガゼル様がグラン様の部屋に行っていたという話が流れていて」
「事実だね」
「それを聞いたバーン様がすっごく怒ってて!早くお部屋に戻るかDDのメンバーたちと一緒に居た方がいいと思いますよ・・・」
「あぁそうするよ・・・忠告ありがとう」
そう言うとヒートは軽く会釈して、また廊下の奥の方に走って行った。
分かってないな。私はそれが目的なのに。
「おい」
そんな私の期待に応えるように、低く、重い声が背中に降ってくる。
視線だけで後ろを見る。
「グランとこに言ってたらしいなぁ?随分と余裕じゃねーか、この前俺に泣かされたばっかだってのによ」
いつもより暗さをを増した金色の瞳に映る自分の姿を見ると、足の先から痺れるような感覚に襲われた。
「次の試合の予定を、」
「通信じゃダメなのかよ。俺の許可無しに一人で部屋にいくほど重大な内容なんだな?言ってみろよ」
そう言いながらズイズイ間合いを詰めてきて、終いには壁に押し付けられた。
「9時に部屋に来い。ばっくれたら・・・ただじゃおかねぇからな」
言い終えるとバーンは踵を返し、来た方向とは逆に去っていった。
時計を見ると今は7時半で、一時間以上もこの熱い体のままで待たなければいけないと思うと、つい期待と焦れで吐息が漏れた。
あえて忘れたふりをして、もっと彼を怒らせてみるのも大変魅力的ではあったが、とりあえず今日は素直に彼の部屋へ向かった。
それは次の楽しみにとっておこう。
「・・・・・・・・」
部屋のチャイムを一回押してみたが、一向に出てくる気配はない。
試しにドアをスライドしてみるとロックは掛けていなかったらしく、プシュッと小気味の良い音を立てて開いた。
それと同時に室内からいきなり手が伸びてきたと思うと、後ずさりする暇もなく襟元を掴まれ中に引き込まれた。
あまりに強い力で引っ張られたため、勢い余って前に倒れ込む。
バーンはすっ転んだ私に手を貸す訳でもなく、不機嫌そうな声を浴びせてきた。
「おせーよ。なんで時間通りに来ない」
「たった五分じゃないか・・・」
もちろんあえて遅れてみた。
「へらへらしやがって、よっ」
二の腕を乱暴に掴みあげられ、無理矢理立ち上がらせられる。
が、すぐに背中を蹴られ、側にあったベッドの上に転がされた。
上体を起こそうとしたがバーンに肩を握られ押し倒されたのでそれは叶わなかった。
のしかかられ、ずいとバーンの顔が近づく。
たっぷりと熱を孕んだ瞳に射抜かれ、体が縮こまったような気がした。
そう、この目。私はこの目が大好きなんだ。
彼は今、私のことだけを見て、私のことだけを考えている。バーンは今私のものになっている。
どんな時よりも、私はこの瞬間に幸せを感じる。
私は今、コイツに求められているんだ・・・・。
「最近なんなんだ、やけに俺に逆らいやがってよ。そんなに酷くされたいか」
「最近の中で君の言付けを破ったのは今日だけだろう・・・?今日の事はちゃんと反省しているよ」
「反省、ねえ・・・」
不機嫌そうだったバーンが急にニヤッと笑う。
「じゃあ態度で示してくれよ」
そう言い私の上から退くと、バーンなんの前触れもなしにズボンを脱ぎ始めた。
急のことでさすがの私も戸惑ってしまう。
「なっ、ちょっと」
「ほら、やること分かんだろ」
髪の毛を掴まれぐいと顔を股ぐらに近づけられる。
「せめてシャワー浴びてからにしてもらいたいんだけど・・・」
「臭いときにやらせなきゃ意味ねえだろうが、さっさとしろよ」
これ以上だだをこねても殴られるだけだと分かっていたので素直に下着からバーン自身を取り出す。
先ほどまでトレーニングでもしていたのだろう。汗の匂いが鼻をつく。
決して良い匂いなんかじゃないが、私にとっては充分すぎる興奮材だ。
「ん、・・・んぅ」
まだ完全に勃っていないそれに口付けて舐め上げる。
愛撫するにつれてだんだん硬度が増してゆき、バーンの吐息も熱くなる。
裏スジに吸い付くと、いきなり頭を抑えられ口に突っ込まれた。
「ふっ!?ふぐっん、んん、ん」
ゴツゴツと遠慮なく咽の奥を何度も突かれ、吐き気とそれによる涙があふれる。
しかし舌に感じる先走りの苦い味に、バーンが私の口で快楽を得てくれていることが分かり嬉しくなる。
もっとよくしてあげたいと、込み上げる嘔吐感を抑えて必死に舌を絡ませる。
「出すぞ、飲み干せよ」
口の中に独特の匂いと味が広がる。
何度も味わったが、やはり美味しいものではないなと思いながら尿道に残っている精液も吸いとり、飲み込む。
満足したのか、バーンは性器を口から抜くとティッシュで拭きはじめた。
そしてそのままシャワールームの方へ・・・え?
まさかこれで終わりなのか!?
「もう良いぞ、部屋戻れよ」
「なん、え?」
「もうグランなんかに媚びんなよ」
そう言うと上も脱ぎはじめた。本当にこれで終わりらしい。
「行くよ?これからも私はグランのところに・・・」
「は?」
このまま終わらせるものか。自分だけ気持ちよくなって終わりだなんて。
「だってグランは君よりずっと優しいし」
「・・・・・へぇ」
ベッドに戻ってきたバーンはやけに優しく後ろから手を回してきた。
「なるほどな、シテほしいわけか?勘弁してやろうと思ったのによ」
ギリリと服の上から胸の突起が抓りあげられる。
「いっ!?」
「こうされたいんだろ」
「ち、違!あ、あぁ」
千切れてしまうんじゃないかと思う程強い力で引っ張られ、また目が潤む。
「おいおい、なに勃たせてんだよ」
せせら笑いながらバーンは私のズボンをずり降ろした。
下着越しでもしっかり分かる程私の性器は主張をし始めていた。
「そんなに乳首が気持ち良いのか、それともしゃぶらせれてた頃から興奮してたのかよ?」
「あ、ぁくっ・・・」
おそらく後者だが、胸を乱暴に弄られている上に耳元で囁かれている状態では答えたくても不可能だった。
胸の刺激に夢中になっていると、ふいに背中に冷たいものが垂れた。
「ひっ!?な、なに?」
「潤滑油ってやつ?」
バーンの手にはプラスチックの容器が握られており、一瞬日焼け止めか何かかと思ったがタラタラと滴る透明の液を見てそれがローションだと分かった。
そんなもの今まで使ったこと無いのになぜ・・・。
バーンは私の下着も取り払うと、孔にローションで濡れた指を這わせてきた。
そのまま入れてくれると思ったのに、すっと手を退いてしまった。
顔をシーツに押し付けられ、必然的に尻を高く上げて伏せるような体勢になる。
しかし羞恥よりも不安の方が先に出ていた。
「待って、まさか」
答えの代わりに後ろにバーンの熱い性器が押し当てられた。
「む、無理、絶対駄目!慣らしてもいないのに入らないっ」
「だから滑りを良くしてやったんじゃねーか」
押さえつけられたままの頭を必死に振って懇願したが、軽くあしらわれてしまう。
「やだ、やだ・・・・」
一応嫌がってはみるものの、もう何を言っても駄目なんだろうなと心の中では分かっていた。
「ーーーーっ!!!!?」
無理矢理入り口をこじ開けられバーンのものが入ってくる。
みちみちと腸壁が押し広げられ、あまりの痛みに声も出なかった。
入らないと思ったのに。いや、入って欲しくないと思ったのに、何度もバーンに広げられたそこは多少の滑り気だけで彼を受け入れてしまった。
「あ、あ、」
「おいおいまじで入ったよ・・・しかも根元まで」
私は呼吸もままならず酸欠の金魚みたいに口をぱくぱくさせていると言うのに、そうさせている張本人は楽しそうに私を見下ろして笑っている。
「う、ふぐ、ば、ばあん・・・頼む、抜い、て」
途切れ途切れだがなんとか訴える。
ここまで痛いとは想定外だった。さっき死ぬ気で抵抗しなかったことが悔やまれる。
意地の悪い彼のことだ。おそらく私の頼みなんて聞き入れないだろう。
案の定言葉を無視して、バーンは私の腰を掴み正面を向かせる為にひっくり返す。
グリと中で方向が変わり、また鋭い痛みが走る。
「ひぐっ・・・ぅ」
「ほら、お望み通り抜いてやるよ」
「!?・・・あっく、あぁあああぁあっ!!」
根元まで入ってたものをいきなり抜けてしまうスレスレまで引き抜かれ、まるで内蔵ごと持ってかれたかのような衝撃に身体が跳ねる。
「ひっやめ、やめぇ!」
「なんだよ?お前が抜けって言うからやってやったのによぉ」
バーンは楽しそうにそう言うとまた奥までねじ込んできた。
入れられる時にバーンのモノが前立腺を擦り、痛みと快楽が入り交じる。
「あ、あっあ・・・」
「嬉しそうな顔しちゃってさぁ・・・」
バーンはふいに愛おしそうに私の頬を撫でてくる。
こうされるから私は、どんなに蹴られようと罵られようと彼に戻ってしまうんだ・・・。
「そんな顔、あっ・・してないっ・・・」
「してるぜ?涙と涎でグチャグチャで、でも『もっとやってくれ』って蕩けた顔してやがる」
「なら・・・なんで・・・」
「ばーか、すぐに楽しませちゃ意味ないだろうが」
バーンは休むことなく私の奥を抉ってくるが、一番いいところは突いてくれない。
乱暴に中をかき回されるたびに少しだけ擦られて、もどかしくてしょうがない。
バーンはそれを分かっててやっているんだ。
こっちは苦しくて自分でも自らのヒューヒューという息づかいが聞こえるほどなのに、バーンはちっとも乱れることなく私を蹂躙し続ける。
このままじゃ私の体力が保たない。
「っは・・・は、どう、すれば、ああっぐ、いいのっ」
「どうすれば?分かりきってること聞くなよ」
そう言ってバーンはまた限界まで自身を引き抜いて、を打ち付ける。
「うあぁっ!」
「俺を喜ばせること言ってみろよ、バーン様の犬です、とかさ」
「そ、そんなこと」
「あぁそう?俺は別にそれでもいいぜ」
するとバーンはふいに動くのをやめて、今までの激しさとは逆にゆっくりと私の一番弱いところを押してきた。
しかし軽く押すだけで先ほどのように突いてはくれない。
弱くジワジワと、しかし確実に快楽の波が広がっていく。
そんな屈辱的なこと、絶対に言いたくない。
しかしこのまま一晩放置するなんてこともバーンはやってのけそうだ。
高い筈の自分のプライドが崩れ始める。
「・・・っ、わ、私は、バーンの犬、だ・・・」
悔しくてたまらないがちゃんと言ったのに、バーンは尚も止まったまま。
「なんで・・・」
身体が疼いて疼いて仕方なくて、思わず涙ぐむ。
バーンはニヤニヤと笑って私を見下ろしているだけだ。
「うっく、私は、バーン様の犬です!」
縋るようにもう一度、今度は叫ぶように言う。
「私はバーン様の犬で、バーン様に奉仕するのが生き甲斐な変態です・・・」
こんな酷いことを自分の意志で言ってるのが悔しくて恥ずかしくて情けなくて、涙がぼろぼろ零れる。
「ほんと、お前ってマゾだよなぁ」
グッと前立腺が抉られる。
「ひ!?あぁあああっ」
激しく何度も何度も同じ所を突かれて、快楽で頭が真っ白になる。
「ほら気持ち良いのかよ!同じ男に、ケツに突っ込まれて感じてんのかよ!」
欲望に理性が塗り潰されて、もうなにも考えられない。
私は馬鹿みたいに喘いでバーンにしがみつきながら首を縦に振るだけだ。
どくんと私の中で彼のものが動く。
灼けるような熱さを受けながら、彼に求められているこの瞬間にどうしようもない幸福を感じた。
その後、気絶しては叩き起こされるのを繰り返されて、結局何回達したか分からないくらい犯された。
腰が抜けてまともに動けない上に精液であちこちベタベタの私に、事が済むとさっさと部屋に戻れと言うんだからバーンは本当に酷い奴だ。
私はバーンの「モノ」だそうだ。だからどんな扱いを受けても仕方ない。
何度も舌打ちをされたが、なんとかバーンの部屋で眠る許可をもらった。
全身痛くて明日ちゃんとサッカーができるか不安に思ったが、明日はDDの練習試合はないことに気付き安心する。トレーニングくらいならなんとかなるだろう。
ふと、横を見るとバーンはもう寝息をたてていた。
明日はガイアとプロミネンスの試合。
勝って機嫌がよければきっと優しくしてくれる。
負けて悔しがっていれば多分今日の様に私をボロボロにするんだろう。
どちらでも良いな。
そう思いながらも心のどこかで「負ければ良いのに」と思っている自分に気付き、我ながらひどい性癖だと呆れた。
2012/04/04