2020年7月23日

嘱託殺人をした医者が二人、捕まった。筋萎縮性側索硬化症の老人から頼まれてそうしたらしい。
ままならない、と思う。世の中も、法律も。
私の記憶が正しければ、老人は身体が動かなくなる病気のはずだ。ただでさえ病気で苦しい思いをしているのに、自ら死のうにも肝心の身体が動かない。ならばもう他者に「殺してくれ」と頼むしかないのは、明らかなのに。
捕まった医者2人がどんな人間だったかはあまり重要ではないと思う。たしかに、嘱託殺人を行動に移せるだけの思考回路を持っていなければ、今回のことは起きなかったわけだけれど。でも、行ったことは積極的安楽死の域を出ないはずだ。患者からしてみれば、感謝こそすれども恨むようなことなど何もないはずなのに。
それでも彼らは殺人の咎で捕まったのだ。
彼らは確かに人を殺した。殺人は罪に値する。けれど、老人は自力でそれをできなかったから頼んだだけであって、もしそれが可能であったなら、老人は自殺していたはずだ。
彼らは確かに人を殺した。だけどそれは見方を変えれば、老人の頼みを聞き届けてやっただけにすぎない。それでも罪として捕まるのだから、やはりままならない、と思う。世の中も、法律も、私も他人も、何もかも。