2019年8月22日

すこし前に、バイト先のお店を「家の事情」で辞めた社員さんがいた。今日、その後を店長から聞く機会があって──映画に行こう、と誘われた。ボスと3人で、ワンピースの映画に。ワンピースは見たことがなかったけれど、好きな声優さんがいっぱいいて楽しかった。そのあと一緒にお酒を飲みながら色んな話をしていて──もうそろそろその社員さんが辞めて1ヶ月経とうとしている今になって、その、「家の事情」を聞いて驚いた。
社員さんの実家が経営していたお店が、従業員に何もかもを盗まれたとのことだった。そのせいで実家が大変なのだと。大変、という言葉では片付かないくらい大変そうだと思った。何もかもを盗まれたと、気づいたのはバイトの人から給料の請求があったからだとか。それでお店に行ってみたら、もぬけの殻だったそう。
社員さんの給料はたしか、20万を超えていたはずなのに、その社員さんは辞める時には家の水道すら止まっていると言っていたそうだから、お店で働いていた給料はすべて実家に送っていたのだと思う。
で、実家のお店が大変だからといって何故その社員さんが辞めることになったのかというと、一かバチかお店をもう一度作って、勝負に出るのだとか。
店長からそんな話を聞いて、なんとなく怖くなった。
客観的にみれば、よくある話なのに。当事者が知っている人になるだけで、こんなにも他人事じゃなくなるなんて。
店長と別れて、ボスと一緒に地下鉄を待っている間、社員さんが出勤する最終日にボスと3人で少しだけ話をしたのを思い出した。
「…すごい今更なこと言っていい?」
「…?」
「…? …はい」
「──ちゃんさ、けっこう身長高いよね」
「え、今更ですか!?」
「それみんな初対面の時に言うやつですよ!?」
……ケーキ、渡しておいてよかった。