2019年8月1日

夢を見た。
あの人の夢。
あの人は、ずっと、眠っていて。
私はそれを、ずっと待っている。
私はあの人と、同じ世界に生きていた。
目が覚めるのを待っているのだと、母にすら話していたし、病室に通う日常の中には、友達と映画に行くことすら含まれていた。私は高校生で、スクールバッグを持って学校にも行っていた。
目が覚めたら、何を欲しがるだろう。
コーヒーでも買っておこうかな。
煙草はきっと、怒られてしまう。だって病院だもの。だから煙草はだめ。あの人は拗ねるかもしれないけれど。
…そんなことを、考えていた。
あの人が目を覚まして、すこし話をした。
私は思ったよりも冷静で、泣いたりはしなかった。ああ、よかった、ずっと待ってたの、看護婦さんを呼ばなきゃ。あの人が目を覚ましたのを見て、そう言った。
また来るね。ちゃんと大人しく寝てなきゃだめだよ。そう言って、病室を出た。
……夢。
覚めなくて、よかったのに。