2019年7月19日

後輩が遊びに来た。
蒼ちゃん。久しぶりだった。
珠華ちゃんも。
急にどうしたのだろう、と思ったけれど、理由は簡単だった。蒼ちゃんがフランスに留学するという。だから、その前に会いに来たのだと。
この前もどこかに留学していた。
彼女は本当に、異国の言葉が好きなのだと思う。
久しぶりに会って、カフェに行って、映画を見て、居酒屋を2軒はしごして、カラオケにも行った。地下鉄の終電を無視してタクシーで帰るなんて、滅多にしないこともした。
はしごした居酒屋の席で、彼女たちは「恋バナ」で盛り上がっていた。中高生の女の子がするような可愛らしいものじゃなく、もっとややこしくて、面倒くさくて、どうにもならないような話を。そもそも、恋とか愛とか、そんなものはいつだってどうにもならないけれど。
蒼ちゃんには彼氏がいる──私は彼女に彼氏がいなかった時期を知らない──けれど、珠華ちゃんは所謂、体だけの関係、に近い状態なのだという。珠華ちゃんは相手を好きなのだけど、相手にその気はないらしい、のだとか。
そうして私に、彼女はこう言い放った。
「先輩は強いから。そう生きられたらいいんですけど、私には無理なんですよ。誰でもいいから、支えてくれる人が欲しくなっちゃう」
強い?
私が?
どうして皆──バイト先の友達や後輩、大学の友達なんかも──私を「強い」と言うのだろう。私の何が、「強い」のだろう。
だって、仕方ないじゃないの。
男の人とそういう関係になる以前に、好意を向けられた段階で拒絶してしまうんだもの。いらないと思って、突き放してるわけじゃないのに。きっと同じように、誰かにそばにいて欲しいのに。
でも、ああそうか、と思ってしまった。
彼女たちはそうやって、心の拠り所を作ることで生きているのだ。それができない私は、少しずつ壊れていくしかなくて。壊れていくことに気づかれないまま「強い」と言われ続けて。そうして私は、死ぬしかないのだと思う。