2019年6月27日

映画を見に行った。
いちばん付き合いの長い友だちで、小学校から大学までずっと同じところに通っている。その子が、映画を見に行こう、と言った。そして一緒にご飯を食べて、伯母がちょっとだけ一緒に飲もうと言った時間までお店をぶらぶらして、お茶をして、暇を潰していた。
その、お茶をしていた時に、友だちは言った。「彼氏できた?」できるわけないじゃん、と返す。「だってバイト先に男の人いるんでしょ?」そりゃいるけど。そうして彼女は、驚きの言葉を紡いだ。
「いつかは結婚とかするんだしさ、……」
彼女までそんなことを言うとは思わなかった。諦めにも似た感情が侵食してきて、もう何も言う気にはなれなかった。
昔は、私たちはよく似ていた。似ていた、はずだ。運動が苦手で、音楽の習い事をしていて、本が好きで、体型が細くて。お互いの家にもよく行ったし、学校でもよく一緒にいた。ずっと一緒にいると生理の周期が合うという話を聞いたことがある。私がそれを本当だと思ったのは、彼女がそうだったからだ。私たちは、生理の周期まで揃っていたことがある。
…いつからだろう。
いつから私たちは、こんなにも遠い他人になってしまったんだろう。
これが、未来を諦めて終わりを見続ける人間と、これから先何十年も生き続けることを当たり前に考えている人間との差なんだろうか。
いつから私たちは、似ても似つかない別人になってしまったんだろう。昔は、大抵のことは、顔を見れば何を考えているのかがわかったのに。
…でも、一緒に終わろうとは、全く思えなかった。彼女はそんなことは考えもしないだろうし、何より私が、彼女の未来が続くことを望んでいるのだから。
ただ、少しだけ、寂しいとは思う。彼女がずいぶんと遠い存在になってしまったことも。彼女は全くそのことに気づいていないことも。いつか、私たちがいなくなったあと、彼女がその事実を抱えて生きていくことも。
そして。
「ちょっと」と言った伯母が指定した店で、伯父と伯母は飲み放題を始めていて、一杯程度だと思っていた私は店に着くなり驚く。適当に頼んだから、食べたいものがあれば追加してね、と言った伯母の言葉の後に運ばれてきたのが、ねぎま4本、レバー6本、つくね6本、砂肝8本、ユッケ4皿と、想像を遥かに超えていて、さらに驚く。そうして私は、店にいる間ずっと「ちょっと」の概念を考えることになった。