2018年4月15日

雨が降っていた。
小雨ていど。傘をさしている人も見かけたけれど、大抵の人は気にせず歩いている。私もその一人だった。
もっとたくさん降ればいいのに。
雨煙がたつくらいに。
氷の結晶にならなくなった雨は嫌いだけれど、土砂降りはすこし好きだ。人通りが少なくなる。傘で隠れたお互いの顔を認識しなくなる。
もっとたくさん降ればいいのに。
夕方からずっと、小雨のままだった。
──なんで、死なないの。──
あの人の姿をした亡霊が立つ。るりちゃん、と私をよぶ亡霊。もうすぐアレがくるのかもしれない。最近の肌荒れの原因はそれか。今回はお腹痛くならないといいな。呑気なことを考えた。
絶望に染まった目で私を見つめるあの人の亡霊。あの人の姿をした、私の、死んだ心の、死にきれずに彷徨っている亡霊。
それを、まだ静かに見つめていられる余裕がある。きっと意識すれば消すこともできるだろう。まだ。
……なんでだろうね。
悲しく思う。
あの亡霊があの人の姿をしていることも。死にたいと思いながら、なぜ死ななかったのだろうと思いながら、それでも生きていることも。あの人の姿をした亡霊に返す答えを持っていないことも。あの人を、まだ好きだと思うことも。
…雨、もっとたくさん降ればいいのに。
絶望色の、あの人の目。
私は、喪にでもふくしたいのだろうか。

海にしずむ、想像をする。
凍りそうな、冷たい水。息はできない。水を吸って服が重くなる。髪がゆらりと、重力を失ったように泳ぐ。暗い水中。水面の向こうの光が遠くなる。私が沈んでいってるのか、意識が薄れていくせいなのか。やっと終われる。息苦しくてしかたないのに、安堵する。下がっていく体温を嬉しく思う。
海にしずむ、想像をする。