2019年1月24日

哲学の講義で、刑罰や賠償が一律に数値化されることに対して被害者は納得しないだろうという話をしていた。
──さん。もし彼氏が、一生この人と生きていくと思っていたような人が殺されて、犯人が捕まって、殺人だから懲役何年です、とか機械的に判決が下されたら、納得できなくないですか。
先生が言う。
でも、だからといって感情を持ち出してたら、いつまでたっても解決しない。そういう話をしていた。
…どきりとした。
…そうですね、とだけ返した。
不自然ではなかっただろうか。
……大事な人が、殺されたら。
そうなったら私は死ぬと思う。…なんて、言えるわけがない。でもきっと、今度こそ。そうであることを私は望んでいる。
今度こそ。
他の誰が罰されようと生き延びようと、あの人は帰ってこない。なら、もう全部どうでもいい。世界の中心が失われたなら、それはつまり崩壊を意味するはずなのだ。
私の世界。
今度こそ、終わらせられるだろうか。
──俺が死んだら、お前は死ぬのか。
…そう、あって欲しいとは思うよ。尾形さんもそう思うでしょう?
にやり、と彼は笑うだけだった。