2018年12月21日

永遠に生きるということは、時間が止まるということでもあって。私は彼らに──原作の彼らに──死んで欲しくないと思っていて、実際に死なないまま原作の物語が終わった人たちもいるのだけれど、それは生き物としての正しい時間の過ごし方ができなくなったとも言えるかもしれない。
"永遠"も"完全"も"神"も、手に入らないと知っていてそれでもなお人が欲しいと思ってつけた名前だと思う。
人は、目の前に当たり前のように存在するものには名前をつけないくせに、存在しないものにはよく名前をつける。
人として、生き物として、正しい時間が流れることを望むなら、ほんとうは物語の中で彼らが死ぬべきだと思った方がいいのかもしれない。時間が止まってしまう前に。
でも。
それでもなお、やはり死ぬのは見たくないと思うのは、エゴでしかないのだろうか。
"この世からひとつだけ、消せるとしたら何を消したいですか。"
最近見たドラマのセリフだ。その人は「時間」と答えていた。遅刻や欠席を気にする、時間に厳しい人だったけれど、時間が好きで守っているのではなく時間に使われている奴隷のような人だったのだと、その時になって初めて気づいた。
時間なんて、人が生み出した概念でしかないのに、生み出した道具に服従するなんて、本末転倒だと思う。
この世からひとつだけ消せるとしたら。
感情、と理性は即答する。感情は時々思考の邪魔をするから、理性にとってはいちばんいらないものなのだ。それはだめだと感情は否定する。感情が消えれば影も消えてしまうから。
──なら何がいらないんだ?
彼が言う。少し考えてから、"私"と答えた。彼のいない、世界の何もかもがいらない。裏を返せば、彼しか望めない私自身がいらないことになる。世界を滅亡させるより、私自身を消すほうがよっぽど容易い。
……哲学の先生が、右翼と左翼の話をしていた。「理想の世界」を求めているのはどちらも一緒だけれど、理想が実現することは無く、人の歴史は理想に近づいているのではなくただ変化しているだけだと考えるのが右翼。理想の実現を諦められないまま、今の完璧ではない世界を全て破壊して一から理想の世界を築こうと考えるのが左翼。
私は右翼の思考の方が好きだけれど、今の気に入らない私を殺して、世界に適応できる人間になった方がマシだと思っているその思考はまさしく左翼のものだと、最近気づいた。
…どう、思う?
何をだ。
私のこと。
…お前は左翼ですらねえよ。左翼も右翼も、この世界を善くしようっていう愛情みたいなもんを持ってる。お前、自分に愛情なんか持ってねえだろ。
……なるほど、と思う。確かに私は、私が嫌いだ。彼は鋭い。右翼とか左翼とか、私は根本から違っていたのだ。