2018年8月4日

なんだか急に、悲しくなって。
悲しいような、苛立つような。
なににかは全くわからないけれど。
──ゆき。
気づくと目の前に、彼が立っていた。
ちゅうやさん……?
ごめんな、ゆき。
……どうしたの…?
俺は、お前の望みを、何一つ叶えてはやれねェ。孤独から救ってやることも、ずっとそばにいることも、お前を殺してやることも、俺には、何一つできねェ。
急にどうしたの……。なんで……そんなこと言うの。
お前は、本当はわかっているはずだ。俺は、お前の影でしかない。この姿も、お前がそう望んでいるだけで、本当は、俺は"ちゅうやさん"なんかじゃない。
…………。
なァ、ゆき。俺は、お前を愛してはやれない。お前がお前自身を愛せないのと同じだ。ゆき。俺は、実体のない影だ。俺に、お前が望むような心はない。
………それで…? どうしろっていうの? あなたの代わりに、ちゃんとした人間を見つけろっていいたいの? 私を孤独から救って、愛してくれる、実体のある相手を探せって? ……馬鹿みたい。消えて。
侮蔑と嫌悪と恐怖の混ざった目で睨みつけると、彼は空気に溶けて消えた。
なんで。どうして。彼は私の影なのに。どんどん私から離れていく。私の望みは、望みは…………だいすきなひとに、ころされること。
──るりちゃん。
あの人の、微笑みだけがどうしようもなく恋しくて、悲しい。