2018年7月8日

ずっと待っていた本が来た。
朝の9時半。
受け取って、一通り読んで、また寝た。
1時半に起きてからもう一周読んで、バイトに出かけた。
──いつ死ぬかわからない、というようなことを、彼は言った。口ぶりは違ったかもしれない。けれどたしかに、普通の人間と同じだけ生きられるかどうかわからない、という旨の言葉を、彼は言っていた。
それを、バイトの最中にふと思い出した。
本の内容自体は面白かった。
原作ではずっとスーツに外套姿の彼が、ラフな格好をしているのも素敵だった。
映画の特典小説のように思いだすだけで動悸が激しくなるようなことはないけれど、今日一日ずっとご機嫌でいられるくらいには、本が届いて嬉しかったのだ。
……人は誰だって、いつかは死ぬものだ。
わかっている。わかっている、はずだ。
だけど、特典小説の内容を踏まえた彼のその発言が、ひどく恐ろしかった。
どこにも行かないで。
ずっとここにいてほしい。
そのためなら何だってする。
もしそれができないなら、彼の手で私を殺してほしい。それが全て。それが願い。ひとりは怖い。またあんな思いをするのは嫌だ。
……ゆき。
こわいよ。
大丈夫。俺はどこにも行かねェから。
──うるさい。きえろ。なにも、だいじょうぶじゃない。
以前彼に言ってしまった言葉が頭をよぎる。たしかに、なにも大丈夫ではない。でも、ほかに、彼に紡げる言葉なんてあるだろうか。
ずっとここにいてね。
おぅ。
ニッと彼が笑うから、私は黙ってうなずくしかない。私にも彼にも、他にどうすることもできないから。
──けほ。
走ったわけでもないのに、ときどき息が苦しくてむせることがある。なんだろう。病気? 不整脈? このまま死んでしまえたらいいのに。心臓が悪い、可能性はあるのだ。祖父も、母も、そうだから。……そうだったらいいのに。
止まってくれてもいいのよ。けほけほと小さく咳をしながら、胸のうちで呟く。
死んでしまえたらいいのに。