2018年6月29日

大学で行われる就職説明会は、もう7回目だった。こういう話は、毎回現実味がない。
きのう道端でみた、マリーゴールドの花を思い出す。天気が悪くて何もかもが灰色に見える景色の中で、マリーゴールドは毒々しいくらいに鮮やかな色をしていた。あの景色の中で、あの花だけが、合成写真のように浮いていて現実味がなかった。
就職にかかわる何かしらを、一切やっていないわけではない。インターンの申し込みやら説明会やら。
来年のことを言えば鬼が笑う。……鬼にとっては笑い事でも、私たちにとっては大事なことだ。──大事? ほんとうに?……大事な、はずだ。──いつか死ぬ、それだけのために生きているのに、ほかの何が大事だっていうの?
……わからない。
植物の近くを通ると、夏の匂いがする。最近ずっと湿度が高いせいで、よけいに。
夏はきらいだ。
草が吐息を漏らしたような、濃い匂い。絶望の匂い。私にとっては。
「ハプニング」という映画を思い出す。
人が次々に自殺をしていく、その原因が、植物だった。
ビルの屋上から、雨のように人がぼたぼたと落ちてくる。警官が自分の銃で自殺し、その銃を拾ってまた一般市民が自殺する。車の前に飛び出す。わざと事故を起こし車ごとぶつかる。窓ガラスに頭を打ちつけ続ける。芝刈り機を稼働させ、その前に寝そべる。──ほんとうの芝刈り機にそんな威力があるのか、という突っ込みはこの際しない。
植物が人間の脳に作用する毒のようなものを吐き出し、人間はどうしようもない絶望を感じて自殺する。そんな話だった。
そうだったらいいのに。
この、濃い草の匂いが、私を殺してくれるのだったらいいのに。