2018年5月31日

詩の講義は、今日は写真集を見ていた。名前はしらない。聞いてない。奥さんが闘病しているころから、死んでお葬式をするくらいまでの写真集。全部モノクロだった。
写真のすべてから、"死"の気配がただよっていた。
なにかの煙突から立ち上る煙。
あの人も、こんなふうに。
タバコの煙が、ゆらゆら昇っていく。
焼かれて、灰になる身体。
ゆらゆら。
おいて行ってしまう。
昇っていく。
死化粧を施された、奥さんの写真。
花に囲まれていた。
きれいにお化粧してもらって、よかったねぇ。母が目をうるませながら笑う。──これは、曾祖母が亡くなったときの記憶。
死体の、冷たい体温。火葬場で、遺体の入った棺が焼かれる音。母と伯母と祖母が抱き合って泣いている。──これは、祖父が亡くなったときの記憶。
焼かれて出てきた、遺骨の写真。
骨壷に収まりきらない遺骨が、押し込まれていく。ぐしゃり、ぐしゃり。
あの人も、あんなふうに。
行かないで。
行かないで。
──ああ、見てられない。