今日はツいてねぇ

近所のコンビニにジャンプが売ってなかった

仕方ねぇからスクーターに乗って少し離れたコンビニまで足を伸ばしてみる。


夏も過ぎ、もう朝晩は風が冷たい。
日差しも夏とは打って変わって柔らかくなり、空気がどんどんと秋に移り変わっていくのが分かる。

と、考え事をしながら運転していると急に横の細道からスクーターが出てきた。


「ぅおあっ!!」
「ぎゃぁぁ!!」


オレは急ブレーキをかけ、相手はハンドルをきったらしい

なんとか衝突は免れたが、相手はハンドルをきっての回避を失敗して転倒したようだ



「おいおい、大丈夫か??」
「ぃてて…私は大丈夫、そなたは??」
「大丈夫だけど、急に突っ込んでくんなよ、銀さんびっくりして寿命縮まったよ?明日にでも死んだらどうしてくれんの君」
「それはそなたの寿命だな」
「君自分が突っ込んできたんだから罪悪感もとう。」


スクーターを立たせながら平然と言ってのけたのは、見目まだまだ若い女だった。
若いとは言ってもオレより少し下くらい、か。


「つか、さっきのぎゃぁぁ って悲鳴、お前さんか??」
「…覚えとらん」
「嘘ださっきのあんただろ、すげぇ女っ気のない悲鳴 ぶべらっ!!」
「うるさいの、覚えとらんと言っとる」

女は自分のヘルメットを持って思いっきりオレに投げつけた。

「…この威力…ホントに女ですかこのやろー」
「しつこい男はモテぬぞ」
「暴力女はモテねーぞ?」

痛む頬を撫でながら女を見やる。

長めの黒髪をルーズに後ろに一つ結びにしている。
化粧っ気はないが、色が白く、愛嬌のある猫のような瞳がそれを感じさせない。
特にスタイルがいいわけでもなく、『ごく普通』の女だった。


「ん?お前さん、腕少し擦りむいたんじゃねーか??」
「これくらい、大事無い。」
「そうは言っても一応女の子なんだから、きちんと手当てしねーともし傷残っちまったら大変だぞ?」

(オレが。)

責任取れとか言われたら大変だ。

すると、女は右腕の擦り傷に左手を添えて

「こんな傷、痕に残ったりなどせぬよ」

と言うと、ふ と微笑んだ。そして左手を離すと、右腕から傷が消えている。
オレは目を擦った。そしてもう一度女の右腕を見ると、やはり傷は消えている。
どういうことだ。


「驚かせてすまなかった。それでは私は先を急ぐので、これで失礼する」

女はそう言うと、沢山ボディーに傷を負ったスクーターにまたがり、何事も無かったかのように走り去った。

いったい、あの女は何者なのか。



「…あ やべ ジャンプジャンプ」

女を見送ったオレもまたスクーターにまたがり、コンビニへ急ぐのだった。



しかし…
責任取れとか言われなくて、良かった。














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