何もそんなに怒るこたぁねぇじゃん、とか、正直めんどくせぇ、とか、いろいろ思ったりする。




「なんで怒ってんだよ」
「怒ってない」
「…怒ってんじゃん」
「怒ってないってば」
「じゃぁなんでこっち見ないんですかー」



俺がそう言うと黙り込む由芽に聞こえるように、大きくため息をつく。


すると由芽は、グッと何かを堪えるように口をへの字に曲げた。

口角が下がりまくっている。


やっぱ怒ってんじゃん、という思いと、なのに何も言ってこない由芽に少しだけ苛立っている。


でも銀さん大人だからな、由芽が口を開くのを少し待ってやろう。




その少しの苛立ちを、頭をボリボリかいてごまかした。







「…別に、怒ってないもん」


唇を尖らせて、俺の反対側斜め下に視線を落としたままの由芽にさすがに、俺は



「あーそうですか。じゃあ俺はもう知らねぇからな」



そう言って乱暴に扉を開けて家を出た。


扉を閉めてすぐ、はぁ と深く息を吐いた。


別に本気で怒っているわけじゃない。



ただこうしないと由芽も落ちつけねぇんじゃないかと思った。





…まぁ正直…ちょっとだけ?

ほんのちょーっとだけ!!
拗ねるような気持ちもねぇわけじゃねぇけど…


由芽がなんで怒っているのか知らないと、俺はどうすることもできないだろ?


それなのに頑なに口を開こうとしない由芽を思い浮かべて、どうしたもんかねぇ、と呟いた。





とりあえずプリンでもコンビニで買って来るか。








プリンを2つ、袋に持って玄関前に立つ。


さすがに、なぁ?
もう落ち着いてんだろ


と、玄関をいつも通り開けて、

「おい由芽、プリン買ってきたから食おう…」

…ぜ、と言おうとして、目にいっぱい涙をためた由芽が、ソファーにきっちり背を伸ばして座って、俺を睨みつけているのに気がついた。



今にも零れ落ちそうな涙は、表面張力で辛うじて由芽の目に止まっている。




「…どこ行ってたの」
「…コ…コンビニ…」


ちょ、なんで泣いてんだよ、俺そんなにキツい言い方したっけぇぇ?!!

ってか、俺そんな泣くほど怒らせるようなことしたっけか…?!!



やべえ、と、焦ってダラダラ背中に冷や汗をかいている俺を睨みつけたまま、由芽はすっくと立ち上がった。


涙はまだ零れない。




「…銀ちゃんのバカ」
「なん、」
「私のこと捨てて出て行っちゃったかと、っ、怖かっ…」



そういってまばたきをした由芽の瞳から、やっと涙が零れ落ちた。




「バカー!!」



叫びながら勢いよく抱きついてきた由芽をよろけながら受け止めて、俺がどこかへ行かないようにと、ぎゅうぎゅうしがみついて子供みたいに泣きじゃくる由芽の背中を撫でた。



やっぱり、由芽はまだまだお子ちゃまだ。
俺と違って。




「…お前も食うだろ?プリン」
「うぅー…」
「心配しなくても銀さんそれくらいで由芽のこと嫌いになんねーし」
「…うぅ…」
「お前置いて、どこにも行かねーよ
ってお前聞いてんの?
あっ、ちょ、お前鼻水つけんなよ」



照れ隠しに、最後は少し適当なことを言いながら、いまだぎゅうぎゅうと俺の腰に腕を回す由芽を腕の中にしまって、頭と背中を撫で続けた。




「…とりあえずよぉ、プリン食おうや」







そしてそんなに怒ってた理由と、泣いてる理由を今度こそ教えてくれや














(拗ねたのも泣いたのも、寂しかったからだよ、銀ちゃんのバカ)






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