*『微睡みの中、君の声』の銀時視点です



鼻歌を歌いながら風呂に入る。


仕事から帰ってきた由芽がすごく疲れた顔をしていたから、飯を食ったらとりあえずすぐに風呂に入るよう促した。


今頃布団の上でぐったりしてんだろう。



だけど、きっと俺が風呂から上がれば、猫のように擦り寄ってきて、満足そうに笑うんだろうな。


俺も早く由芽といちゃいちゃしたい。

そう思ってできるだけさっさと風呂から上がる。


勝手知ったる由芽の家。
タオルを取り出してガシガシと頭を拭きながら部屋に戻ると、由芽は今にも閉じそうな目を一生懸命開けようとしていた。


「銀ちゃん…」
「…おやおや、由芽ちゃんおねむかい?」
「……銀ちゃん…」


かなり疲れているんだろう、由芽は布団の中にも入らずに、布団の上に投げ出した身体をピクリとも動かさず、頭だけこちらを向いた。



本当はいちゃいちゃしたかった、ケド、こんなに疲れている由芽を無理やり起こすのは気の毒だ。


ウチでは子供がいるから、キスをするのにすら気を使う。
こうしてたまに由芽の家に来たときだけ思う存分いちゃいちゃできるから、内心とてもしたかった、いちゃいちゃ。


でもなんかもう、必死な由芽を見ていたら可哀想で
「…もう寝なさい?」
と声をかける。


銀さんは大人だからな、我慢我慢。

本当はすごくいちゃいちゃしたかったんだけどね、すごーく。

でも由芽は、そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、弱々しく首を横に振った。


…なんだよ、カワイイなコノヤロー。


俺はタオルを放り投げて、風呂から上がってそのまま布団に倒れこんだんであろう由芽にきちんと毛布をかけると、その隣にもぐりこんだ。


すると、由芽はもそもそと身体を俺のほうに向けて、抱きつこうとする。

もう動くのも億劫だろうに…
そこまでするほど俺は本当に由芽に想われているらしい。

由芽の体温に、愛しさが込み上げる。


でも、いつもよりぐったりしている由芽に、

「…疲れたんだろ?」

と声をかける。

もう今にも眠ってしまいそうな由芽の目はもう閉じていて、返事にも間が出来始めた。

「…ぎん ちゃ…」

俺の名前を呼ぶので精一杯らしい。

あぁ、もう無理しなくてもいいから。


「わかったわかった、銀さんはここにいますよー」


まるで小さな子供のようで思わず噴き出した。
父親にでもなった気分だ。

子供を寝かしつけるように、片手でポンポンと一定のリズムで背中を叩いてやる。



いちゃいちゃ、とは違うけど、たまにはこんな風にぴったりとくっついてのんびりと過ごすのも良い。


可愛い可愛い彼女の瞼にキスをする。


すると由芽は、ふ と笑った。


とても幸せそうに、安心しきった笑顔を見せる由芽に、強く強く抱きしめたい衝動に駆られる。


なんなんだ、さっきから俺は我慢していると言うのに、可愛すぎるじゃねぇか。



由芽の体温が、必死に抱きついてくる細い腕が。
こんなに疲れるほど必死に働く細い身体が。
「幸せだ」って伝えてくれる笑顔が、俺を呼ぶ声が。
由芽のすべてが。



愛しくて愛しくて、大切で

由芽を抱いてすぐ傍で眠れることが、俺をどんなに安心させるか。


俺は、そんなこと素直に口に出すなんて恥ずかしくて出来やしないけど


「はいはい、いいから、由芽ちゃん笑ってないで寝なさい」


その代わりに、愛しさをいっぱい込めて、唇に軽くキス。


大人なキスは、由芽が目覚めたらたくさんしてやろう。おやすみ、由芽。
良い夢を。




微睡みの中の、君の笑顔






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