銀さん専用の大きな椅子に膝を抱えて座り、ため息をつく。



「はぁぁぁぁ」
「ちょっとちょっと由芽ちゃん?きみなんなのよ、人ん家来ていきなりデカいため息つくわ俺の椅子奪うわ…」


銀さんはそう言いながらソファーにドカッと座った。



こんな言い方をするけれど、どこか心配してくれているように感じるのが、銀さんのぶっきらぼうな優しさを感じるところで、私はそういう銀さんがたまらなく好きである。





「ねぇ銀さん、銀さんの青春って何色?」
「あ?あー…肌色?」
「さいてー」
「何言ってんだお前、年頃の男なんてみんなそんなことしか考えてねぇもんだよ
 それが2次元とか3次元とか2.5次元とか、幼女とか熟女とか、異性とか同性とか
 そういう差はあってもそういうもんなんだよ」
「………」



なんだか熱弁している銀さんに、引いた視線を送る。



銀さんは頭の後ろに両手を組んで、天井を見つめた。

何か思い出してるのかな。


好きな人とかいたんだろうか。

いたよね、銀さんはもう大人だし、今までにそういう人がいたっておかしくない。



「私は、灰色だなー…」
「まだまだガキのくせに何言ってんだよ
 なんなら由芽の年頃なんて青春始まってすらないからね」
「もう終わってんだ、よーだ」




私は銀さんの言葉を聞きながら、椅子をクルリと回した。




万事屋の景色が回って、銀さんが視界から居なくなる。




あぁ、この方が良いかもしれない。

だっていくら私が銀さんを見つめても、銀さんは私を見てくれやしないのだ。




銀さんは私よりもずっとずっと先を、広くて大きな世界を

見ている気がする。




「まぁ、灰色っつーのは素直な意見かもな」



抑揚の少ない銀さんの言葉に、またイスをクルリと回して銀さんの方を向いた。

相変わらず銀さんは頭の後ろに両手を組んで、天井を見つめている。





「青春なんて、みんながみんな爽やかなもんとは限らねーもんな」
「……」
「そりゃ嬉しいこともあるだろうけどよ、悲しみや憎しみや嫉妬や独占欲だってつきものだからな」
「うん、」



わかる、と言葉を続けたかったけど、銀さんの言葉を遮りたくなくて、うん、と返事をするに止めた。


銀さんがそういう風に思った内容が、私みたいに恋愛なのかなんなのかはわからない。




若いころの銀さんが何かと…
そういう負の感情と戦って、ねじ伏せてきた人なのかと思ったら、

その痛みを想像したら、

愛しくて愛しくて泣きたくなった。





想像の中ですら銀さんが傷つくのはイヤだと思うあたり、私は本当に銀さんに心を乗っ取られてしまったらしい。




いろんなものと戦って今の銀さんが存在するのか。





「でもよ、由芽ちゃんの身近にいる大人代表の銀さんとしてはー、可愛い若者が灰色な青春をおくるのは黙ってみてられないわけよ」
「なにそれ」
「っつーわけで、由芽には素敵な恋を体験してもらうぜ。俺も青春やり直したいし」
「…私銀さん相手じゃないと真っ黒な青春になるよ」



私が小さくそう言うと、銀さんはふっと優しく私に笑った。

そして私に近づいてくると、大きな手のひらで私の頭をポンポンと軽く撫でる。


それだけで私の灰色の青春が、一瞬にして透明に澄み渡ってく気がした。


「わかってるよ。
 由芽、俺の彼女になりなさい」
「はい」



私が素直に頷くと、銀さんはまたふって笑って


「由芽、ほら」


と言って両手を広げた。



私はガタガタと音を立ててイスから立ち上がって、こけそうになりながら銀さんの胸に飛び込んだ。











その青春何色?






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