「教室が横に見える。」
「…当たり前やん」
「…そうやね」


そう言うと、隣の席の一氏君は、横向きで呆れたようにため息をついた。

…違う。横向きなのは私であって、一氏君は普通に席に座っている。

つまり私は今、机にへにょりと上半身を預けている。



「…あかん、わからへんかった」

テストの話である。

チャイムが鳴って、どんどんテストが回収されていく。


私の言葉に、一氏君はチラリと私を見て、何も言わずに頬杖をついて前を見た。


また呆れられたんやろか。
バカと思われたかな…
まぁ実際バカやけど。


私はそのまま一氏君の指をボーっと見ていた。
一氏君は、意外に指や爪がキレイだ。

女の子みたい というわけじゃなくて、指もしっかりしてるし爪も幅が広いけど、手入れをキチンとしているキレイさだ。


そう思ってジッと見てたら、一氏君の睫毛が意外に長いことにも気づいてしまった。


なんか、ちょっと悔しい。



すると、一氏君が不機嫌そうにこっちをチラッと目だけで見て、

「…なんやねん」と言った。


「なんもー」
「…なんも、ってなんやねん、ハッキリ言わんかい」
「そんなん言われても」

別になんもないし

ただ、睫毛が長いことに気づいてしまったからなのか
それともいつもと違って横向きで見ているからなのか

いつもよりも一氏君がかっこよく見えた。


もしこれが横向き効果のおかげやったら、合コンやデートで横向きになる人続出…

するわけないか。


「…見てただけー」
「…アホちゃう」


そう言って、一氏君はプイッと顔をそらしてしまった。

「長いこと考えてそれかい」

とツッコミも忘れない。「…怒った?」
「別に」
「……照れてるん?」
「死なすど」
「…ひどい…」


私がうぅぅ、と泣きマネをすると、一氏君はまたチラッと私を見た。


「ちゃうねん、あんな、一氏君睫毛長いなー思ててん」

私が正直にそう言うと、一氏君は目を見開いて、口も『は』みたいな…

いや、実際
「はぁ?」
言うてたな

それから一気に顔赤くなって、またプイッと向こうを向いてしまった。

おまけに

「何言うてん、ほんまアホなんちゃうん自分、っちゅーか間違いなくアホや」


とまで言われてしまった。

私は今日一体何回一氏君に『アホ』と言われたのだろう。

机の木目まで『アホ』に見えてきた。

アレ、机にまでバカにされてんのか私。



「…じ、自分の方が、睫毛長いやろ」


相変わらず机にへたり込んだまま机の木目を眺めていると、一氏君が突然そう言った。

チラッと一氏君を見る。「…ん?」
「…浅井のが、睫毛長くて女らしい言うてんねん」
「…ん?」
「…っ聞いとけや!!人がせっかくっ……」
「私そんな長ないで?」
「聞いとんのかい!!」


わお
なんだかよくわからないけど、横向きの一氏君は急にプリプリ怒りだした。

…重ねて言うが横になっているのは私であって、一氏君は普通である。



それからムスッと頬杖をついた一氏君は正面を見ると、


「せっかく人が褒めてやってんねから喜べや」


と言うので、私は上半身を起こした。
教室も一氏君も真っ直ぐに戻る。


でも、あれ?
一氏君はかっこいいままだ。

横向き効果じゃなかったらしい。
(流行らそ思ったのに)


でも、じゃぁなんで一氏君はかっこいいままなんだろう。


「…浅井はアホやけど…ふわふわしててえぇんちゃう」
「…ん?」
「…っ、やから!!かわえぇ言うてんねや!!最後まで言わすなや感じろこのアホ!!」
「感じろて…私ジェ●イの騎士ちゃうし」
「うっさいアホ!!」


一氏君は、またプイッと向こうを見てしまったけど、耳まで真っ赤だった。


あ そうか
一氏君が急にかっこよくなったわけやなくて、どうやら私が変わったらしい。



「まぁ浅井なんかより小春の方が上やけどな!!」
「…えー…」
「あ 当たり前やし!!」
「…頑張る」
「…は」
「私、一氏君のこと好きみたいやねん」
「はぁぁぁぁぁ?!!」











(急過ぎるやろ!!アホちゃう!!)
(アホやけどかわえぇ言うてくれたやん)
(〜〜っ!!)
(一氏君は?小春ちゃんの方が好きなん?)
(言わすなアホ!!感じろ!!)
(やから私●ォースは使えへん…)
(アホ!!)


そんな君が 好きなのさ








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