窓の外は暗く、初冬ならではの寒そうな風が木々を揺らしている。暖房が効いたこの部屋では寒さなんて微塵も感じられないけど、それを見るだけでこちらまで寒いように思えてきた。
タンクトップだけじゃさすがに室内でも寒く、その辺にあったジャージを手繰り寄せ、袖を通す。あくびをかいた後に壁にある掛け時計を見れば、針は既に23時も佳境に入ったことを示していた。
「ん、」
その時、視界の端何かが光り ふとそこを見ればベッドの隅に置いた携帯が振動しながらチカチカと光って、着信中だということをオレに知らせる。ディスプレイに表示されているのはさっきまで会っていた恋人の名前で。
何かあったかとと思いつつ通話ボタンを押し耳に受話器を当てた。
「どうした?」
『あ、安形?』
「おー」
はは、と何故か笑ったミチルがいるであろう受話器の向こう側はシンと静まり返っている。小さく欠伸をかいた後、床に無造作に置かれた雑誌を拾い上げペラペラとページをめくった。
「…で?なんか用か?」
『あ、いや、ちょっと』
ミチルが言葉を濁らせ、それに対しひっそりと眉根を寄せる。その雑誌も大して面白いものは載っていなく、音をたてて床に放った後 体をベッドに横たわらせた。暫しの沈黙を破ったのは、ついさっき語尾を濁らせたオレ好みの柔らかな声だった。
『………こ、声、を』
「は?」
『安形の声を、聞きたくなりまし、て』
「…」
おい
なんだそれ、
『……』
「…」
数秒、時間が止まる。止まったそれは、ミチルの小さなため息で動き出した。口が線状に結んでいたのが解かれ、ふやけてきそうなそこを片手で押さえる。ぐあ、と一気に沸き上がってくるテンションを沈めようとした
が、
『な、なんなら……直接、会いたい、……』
です、と呟くように付け足したミチルのせいで、ゲージがぶっ壊れる音がする。
「オレも、お前に会いたくなった」
低くそう囁くと、電話越しでも聞き取れたのか 息をのむのが聞こえた。いつもとは比にならない早さで寒さ対策のダウンを羽織った。
「あ、安形…」
「すっげえ寒かった、あっためて」
「いや、親いるし…」
カーディガンを羽織ったミチルに抱き着き、体温を求めるためにこれ以上ないほど体同士を密着させる。
「別に、そうゆう意味で言ったんじゃねえけど」
「……」
温かくなってきた体を、更に強く抱きしめた。
深夜のラブコール
……
直接会いたい
お題配布元:空色の雫
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