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たたんたたんと、電車は揺れる。


窓の外ではゆっくりと景色が流れ、雲が細い線となって空に浮かんでいた。心地好いリズムで目的地まで俺らを運ぼうとしているそれには、他に誰も乗ってはいない。


「んー…なんだかんだ言って楽しかったね」
体を思い切り伸ばしながらそう言ったミチルは、次の行動として俺に肩を寄せてきた。緩くパーマがかったその髪は、まだ少し水分を残している。

「だろ?」
含み笑いと共にそう返せば、上目遣いで睨まれた。

「いきなり家から連れ出されることがなければ、もっと楽しかったよ」
厭味ったらしいことを言う割には、口元は心なしか笑っているみたいに見えなくもない。

「いきなり過ぎるんだよ安形は。いつもいつも…」
「まあまあ」
ぶつぶつと文句を垂れはじめたミチルの頭を、ごまかすようにくしゃりと撫でる。程よく濡れた髪を幾度か梳いてやれば、はしゃぎ疲れたらしいミチルは 眠くなってきたのか欠伸を繰り返していた。

「眠い?」
「……まあ、ほどほどに」
くあ、ともう一度大きく口を開き 安形は?と涙の膜ができている目で俺に問う。首を横に振って否定をすれば、次はこてんと肩に頭を預け そう、とだけ呟いたのが聞こえた。




数分後にはもう小さな寝息たてて、隣の恋人は人の肩で寝てしまっている。髪の毛に絡ませている指で、再度軽く梳いてみると、ミチルの体はぴくりと反応した。
なんだかそれを見ていると、可愛くて仕方がなく思える。微かに潮の匂いが漂うそこに鼻を擦り付けて、そのまま 瞼を下ろした。


******

「ここ、どこ?」
「…乗り過ごしたな」
「起こせよバカ安形!」


そんな休日だったり


end




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