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安形と、思いが通じ合ってしまった。




夕暮れが背中を照らして、ほんのりと暖かい。二歩程前を歩く安形のそこが、薄いオレンジに染まっていた。
そう、いつもと同じ。
いつもと変わらなすぎる、いつもの帰り道

だけど、決定的に何かが違った。



安形と、想いが通じ合ってしまった。
(…ど…どうすればいいんだろうか)
学校で、安形と話した。…話して、なんだかいい雰囲気になって

今に至るわけだけど。


少しだけ歩く速度を速めて隣に並んでみる。かつかつとローファーがコンクリートにぶつかる音が妙に耳に残った。今まで当たり前のように一緒に下校してきたけど、いざ意識してしまうと普段通りの帰路が、心なしか凄くぎこちなく見えてくる。
(…昨日まで、どうやってこの道歩いてたっけ)
ふわふわとしていたのは学校を出るまでだった。校門を抜けた途端に緊張感がオレを貫いた。
(どんなふうに、喋ってたっけ)
風で木々が揺れ落ち葉が舞い上がる。乱された髪を二人で同時に指を通し、思わず顔を見合わせた。

「…風強いね」
「ん、おぉ」
急に話を振られて驚いたらしい安形からそれだけの返事が返ってくる。
がしがしと頭を掻くゴツい手が、急にオレの頭に伸びてきた。驚いて硬直していると、髪に指を通される。その後離れていった指には茶色い木葉がくっついていた。

「あ、葉っぱか…」
「おー」
葉の先端を指で挟みくるくると回しながら頷いた安形に、ありがとうと告げる。ちゃんと笑えていたかなんて、気にしている暇はなかった。
そこから何を話すことはなく黙々と歩を進めとある角を曲がったところで、あることに気づく。
(さ、さりげなく車道側を歩いてやがる…)
今初めて気がついた。安形が当然のように車道側を歩いているのだ。いつも自分が女の子と歩く時自然にしている行為を、故意か無意識かはわからないが、そんなことしそうに見えない安形が軽々とやってのけている。
よくわからないけど急に守られている感じがしてきて、一瞬で胸が一杯になった。


「…安形」
「あ?」
「あ、な、なんでもない…」
なんだよと緩く微笑んで顔を傾けた安形に、心臓が大きく脈打つ。だめだ、上手く喋れない。苦しい、オレ、このまま死ぬんじゃ。……まるで喋り方を忘れてしまったみたいだ。


「ミチル、」
「は、い」
「手ぇ繋いでも、いいか」
「え」
呟かれたその言葉に返事を返す間もなく、右手を取られる。ぎゅん、と何かのバロメータが一気に上がった気がして手汗まで出てきたように思えた。
学園の貴公子が手汗なんて、女の子達が知ったら幻滅されるかな。
ああでも、いいや、だって相手は安形だ。


「…なんか」
きゅ、とやっとオレが気づくくらいの力で右手を握り直されると同時に降ってきた声に、弾かれたように顔を上げた。

「接し方が、いきなりわかんなくなった気がすんな」
「…」
「…今まで、どうやって話してたんだか忘れちまった」


(う、わ)
なんだよ、それ。

あーくそ、なんて後頭部を掻きながら顔を逸らす安形を見て、考えるよりも先に足が止まってしまう。宙ぶらりんになった互いの腕に気付いた安形がどうした、とオレに振り返った。
顔が熱い、安形の顔を見れる気がしない、緊張する。


「…な…んでオレとおんなじこと考えてんだよ、あほ」
「……は…」

安形の全てが好きだ。安形が何をしてもどんな行動をしてても、きっとオレは絶対に安形が大好きだ。ちくしょう、置物生徒会長のくせに、オレをこんなことにするなんて、本当に、凄く、むかつく。

「くっそ、安形爆発しろ…」
「いきなりどうしたんすかミチルさん」
「うるさい、死ね。オレも死ぬから死ね」
ぎゅ、ぎゅと何度も力を入れてくる安形を睨み口元を腕で隠す。
これからもこんな帰り道を繰り返すのかと思うと、それだけでどきどきした。


end


(あれ、ミチルって)


(こんなに可愛かったっけ)








リクエストに沿えることが、できたでしょう、

か!←
初々しい=付き合いたてほやほやなイメージがありまして、そこからお話を膨らませていきました。榛葉さん視点しかないので、どうかなあどうかなあと思いながら書かせていただきましたが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

尚、この小説はやま蘭さんのみお持ち帰り可です。煮るなり焼くなりお好きにどうぞ!
リクエストありがとうございました!


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