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オレ達の休日ってのは結局、何事もなく通り過ぎるわけで。
何がどうとかアレがこうとか、特にすることは全然なくて、普通の、何の変哲もない休日を送っていた。

週末は平日からの延長線のような感じで、必ずと言っていいほどどちらかの家で一日を過ごす。日を跨いで泊まることもあれば、夜に帰ることもあった。
その日の過ごし方は漫画を読んだりどうせ手をつけることのない課題を建て前として机の上に広げてみたりアレとかコレとかしてみたり、言わばまちまちだ。


「安形ー、お昼できたよ。ちょっと、ねえ、起きて」
「んあ…、……なに」
「お昼、食べよう」
「…めんどくせえぇー…」
「そんなこと言ってないでほら、早く起きて」
大きな欠伸をかいて目を擦る安形の体に手を添えて軽く揺する。
ついでにあーとかうーとか唸るのを制するように腕を叩いた。すると参ったと言うように上半身を起こしたと思えば、そのままオレに身を委ねるように倒れてきた。不意をつかれて慌てながらもなんとか支えると、首に腕が回る。

「ミチル、キスしろ」
「馬鹿か」
ぐだー、とオレにもたれ掛かる安形を一蹴しながら、黒髪をくしゃくしゃと掻き回す。首筋に当たる生暖かい吐息がくすぐったい。

「寝起きにはキスが一番」
「うるさい。早くしなきゃお昼無しな」
「……わーったよ、起きりゃいいんだろ」
ぎし、とスプリングの軋む音とともにベッドから降りたのを見てからオレも一緒に部屋から出ていく。
階段を下りていくことに比例して、自分が作った上出来の料理の香りが漂ってきた。






「じゃあ、帰るね」
「おう」
夕暮れの上に塗り潰されたみたいなオレンジの空が広がっていた時間帯も過ぎ、屋根の直上は紺色に近い闇に覆われた。
課題や教科書が入ったトートバックを肩に提げて安形に向き直る。
なんとなくまだここにいたくて、靴を履き直すフリをしながらそこに留まったままでいると安形の視線がオレに注がれるのに気づいた。


「…なに?」
「いやお前こそ何だよ、もたもたして」
「もたもたって…」

…早く帰って欲しいのか?
なんて聞くこともできなくて、聞けないまま沈黙が訪れる。ちらりと覗いた安形の目はやっぱりこちらを見ていた。


「……あ、あがた」
「何」

「あの、…ちょっとだけ補充、させてください」
「は?」
何を口走っているんだと思いながらも、そう言った自分を心底褒めたくなった。一歩半程歩を進めて、段差の上にいる安形に腕を伸ばす。

それと同時に引き寄せられ、気がつくと安形の腕の中にいた。

「あが…」
「ミチル、好きだ」
裸足のまま段差を下りたを安形が、オレの髪に指を絡ませながら耳元でそう囁く。
ギュッと握り込まれたようになる心臓がどくどくと動き出して息苦しい。


(ああ、どうしよう)


「……あがた」
「あ?」


「帰りたく、ない…」



口が滑った、恥ずかしい、なんてもうどうでもいい。何故かひたすら「安形と離れたくない」という感情がオレの中を埋めつくした。黙りこくった安形の腕に力が入って、互いの意思が確かめられる。



冒頭のほうの言葉は、前言撤回させてほしい。
オレ達の休日っていうのは、「日を跨いで泊まる」ことしかない。それがないと、満たされないんだ。


外気が侵入してくるように薄く開いた扉が、音を立てて閉ざされた。


end


ひぎゃああああああ

え、何コレ、凄く誰得(すみません私得です←)
リクエストは「安榛の日常生活」で承っていたはず

な、の、に!
おもっきし休日生活!
そのほかにもツッコミ所は沢山ありますがね、えぇ。
玄関先の(結構定番の)くだりを書きたくてしょうがなかったというのが結論(本音)です(

……言い訳が長い!
とりあえず、リクエストに沿っていなさすぎて申し訳ありませんということを伝えたかったのです。
この作品はやくじさんのみお持ち帰り可です。煮るなり焼くなりご自由にどぞ!
ということで(どうゆうことで)リクエストありがとうございました!


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