「オレはトナカイがいい」
「いーや、断固サンタだ」
23日天皇誕生日の振替休日、所謂24日のクリスマスイブ。ミチルとオレは、オールマイティな感じの百貨店のある一角で揉めていた。
「女物だし、入るわけないから!」
「お前細いんだし、入るだろ」
コスプレコーナーの前で。
安形と
榛葉で
「オレはトナカイがいいんだよ!」
「んな色気のねぇこと言ってんな」
二体のマネキンがサンタとトナカイのコスチュームを着飾り、その目の前で必死な顔をしてオレに訴えるミチル。それを軽く一蹴すると、そいつは結んだ口で唸り子供のように地団駄を踏む。
「じゃあせめてユニセックスの!ズボンの!」
「却下」
せめてもの妥協案、そう言わんばかりに出された考えをこれまた一蹴し これしか有り得ないだろうと女物のミニスカサンタのコスチュームを取り出した。嫌そうに顔を引き攣らせながらそれを受けとったミチルの耳元で、低く小さく囁く。
「これ着てくれたら、ミチルのして欲しいことなんでもするんだけど」
「な、んでもって…」
「なんでも」
「……パーティーの片付けとか?」
「色気がねぇっつの」
はー、と大袈裟にため息を吐き、ミチルにデコピンを食らわす。ぶちぶちと文句を垂らし出したそいつを置いてレジにミニスカサンタのコスチュームを持っていこうとすれば、オレは着ないからな!なんて声が後ろから聞こえてきた。
「……こんなの全然ハッピークリスマスじゃない」
「オレは超ハッピーだな」
「安形は見る側だから他人事なんだろ…」
なんだかんだ言って結局はオレの言う通りになってしまうミチルは、真っ赤なサンタ服を見事に着こなしている。恥じらうように閉じられた生足は、きちんとケアされてあり男のクセに今すぐにでも触りたくなるくらいに綺麗だった。
「そりゃ安形はトナ、ぶ、ふっ………トナカイだし」
「おい、今笑ったろお前」
赤く丸い鼻。角の生えたカチューシャ。サンタを着させるなら安形はこれをつけろという、ミチルたっての希望でそれらをつけたオレに そいつは耐え切れず吹き出す。
「っこの、はな………っ」
「うるせーな」
びよん、とゴムでとめられた赤っ鼻を引っ張りながら肩を震わせるミチルにムカッ腹が立ち、思いっきりスカートをめくり上げてやった。青チェック柄のトランクス。
「うわ!何すんだよ!」
ばか!スカートを押さえ付けながら、赤い顔でそう怒鳴る。その手をどけてもう一度でろーとめくってみれば、髪が抜かれる勢いで引っ張られた。
「サイテーだ」
「別に減るもんじゃねぇだろが」
「どこの親父だよ」
「まあまあ」
「とか言いつつ手ぇいれるな」
ぱし、と払われたのは、スカートと太股の間に忍び込ませようとた右手。不意をついてミチルの肩を抱くと、胸元で小気味いい音が鳴る。
「まったく……クリスマスだからって浮かれないでよ」
「オレはイブのほうが好きだ」
「いや知らないよそんなの」
いろいろと諦めたのかオレの腕の中で抵抗することもなく、大人しくそこに収まるミチルにキスをすると服に負けず劣らず顔が赤くなった。
「いいクリスマスになるといいな」
「雪とか降ればロマンチックだね」
「おー」
気を紛らわすかのようにオレの角を弄るその手を取って自分の首に回させる。
ちらりと除いた窓の外には、待ってましたと言うように深々と雪が降り始めていた。
end
榛葉サンタ、絶対可愛いな…!
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