season | ナノ


「安形」

朝一番。透き通る空気と真っ青な空を見上げながらミチルが出てくるのを待っていたオレを呼んだのは、待ち人本人だった。

「よー」
片手を上げて挨拶をすれば、ミチルも同じように返す。オレと顔を合わせて、ミチルは満面の笑顔で口を開けた。

「誕生日、おめでとう」


常みたいな


「…で、あの、安形さん」
「あ?」
時は進み、その日の放課後。
生徒会その他諸々の面々から祝いの言葉をもらった後、放課後の活動が皆無だったオレは 同様ミチルに連れられて榛葉宅に来ていた。

「オレを解放してやってください」
「え、やだ」
横たわっているのを後ろからオレに抱きしめられたミチルは、心底迷惑そうな声でそう頼んでくる。もぞもぞと身じろぐミチルに追い打ちをかけるように故意に足同士を絡ませた。息を詰まらせた途端に体温を上げたのを機に、更に強く抱きしめる。

「あの、ほんと、物凄く邪魔。制服にシワつくよ」
ぐいっと右手でオレの頬を押しやりながらため息をつかれて腹が立ったので、首筋にかじりついた。ひく、と体を強張らせたミチルを抱え直して再度軽く歯を立てる。

「なー、今日はオレの誕生日だけども」
「し、ってるって」
「なんもしてくれねーの」
「だー……から、何かしようと思ってもお前が邪魔で何もできないんだよ」
「どけたらなんかしてくれんのか?」
「……まあ、考えてはいる、かな」
なんて、首筋に歯形をつけて赤くなった顔を枕に埋めてもぞもぞと口を動かすから、可愛く思わずにはいられなくなりますます離したくなくなった。しかしオレのために何か色々としてくれるなら、と考え腕に込めていた力を少し緩める。

その隙にオレから抜け出したミチルは、素早く髪を直してベッドの縁に腰掛けた。
小さなため息をつきながら立ち上がるのを眺めていると、ふとミチルがこちらを振り返って言い放つ。

「じゃあ、スーパー行ってくる」
「スーパー?なんで」
「材料買うから」
「え、料理すんのか?」
「軽食程度でね」
側にかかってあったコートに腕を通し、ポケットに携帯と財布を入れて頷いたのに納得したのもつかの間、素っ気なく踵を返したミチル。

「待てよ、オレも行く」
無駄な肉がついていない二の腕をぐいぐいと引っ張っていると、遠慮したような声色で唸った後 眉を下げて口を開いた。


「………荷物持ってくれるなら、いいけど」
「……」
「邪魔になるだけだな」
「冗談だろ冗談」
言いながら手に取った上着を羽織り、ミチルの手を引く。
欠伸をかいて空を仰げば、どこまでも続いていきそうな青が綺麗に広がっていた。


end


日常みたいな誕生日




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