season | ナノ


「…いい夫婦の日、だと」
「さいですか」

ぺら、と雑誌のページをめくったオレの太股に頭をのせてテレビを見ていた安形が、ぼそりと呟く。もう一枚それをめくりながらその言葉を一蹴すれば、雑誌置きにしていた安形の頭がぐるりと回って凝視された。


しいこと


「…さいですか、ってつまんねえなあ」
「そう言われましても」
手から取り上げられた雑誌を諦めて安形の部屋に設置されたテレビに目を向ける。
映っていた番組では、「いい夫婦」(深く言えば長く付き添ってきた人たち)と銘打った芸能人や一般人が出ていて、夫婦らしいトークを繰り広げていた。

こんな小さなイベントで1時間の番組を作ろうと思うとは、テレビ局もよくやるなあ。なんて、らしくもない考えを頭で反芻させながら眺めていれば、ふいに安形の視線がオレから外れる。

「なんかこう……『そうだね、安形☆』とか、可愛い反応を」
「誰も言わないからそんなこと」
「ちっ」
と、舌打ちしやがった安形の額を軽く叩けばその手を取られて甲にちゅ、と口づけられた。
なんだか気恥ずかしくて顔を背けると、安形が笑う。

「……まあ、それらしいことしようか」
そう言ってテレビを消せば、お、と安形が起き上がり 不敵に口角を上げた。

「それらしいこと?へえ、大胆になったもんだなミチル」
「え、何言ってんの」
ばかなのお前、と立ち上がる際に言うと、がっかりしたように文句を垂らし始める。そうゆうのばっかり考えてるからダメなんだろ。ふい、と安形に背を向けて部屋を出て行こうとすれば、のそのそと安形がついて来た

「結局なにすんの?」
「昼ご飯作る」
「ああ」
そのためにはキッチンを借りなければならない。その主旨を伝えると、すぐに了解を得ることができた。

「手伝ってやろうか」
「………校内放送の時のこと、忘れた訳じゃないよな?」
「いてて」

するりと腰に回った手をつねりながら安形を睨むと、バツが悪そうに苦笑いを浮かべる。
本物の夫婦になれるわけじゃないけど、男同士でも出来ることは沢山ある。
ふ、と少しだけ口を緩めて廊下を二人で歩いていった。


end


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