season | ナノ




「はー……、うめぇ」
「んー」

2013年。基本何をしても「初」がついてしまう、1番初めの日。こたつに入ってミチルの背中に温もりを感じながらみかんを口に放り投げ首筋に顔を埋めれば、くすぐったいのかそいつがもぞもぞと体をよじった。

オレの両足の間に挟まって年賀状を一枚一枚読んでいるミチルは、時折頬が緩んで可愛い。親しい友人からでもきたのだろうか。


正月の幸せ


「ミチル、みかん」
「ん?あぁ、ありがとう」
肩に顎をのせてみかんを一房ミチルの口に入れると、数回噛んだ後に優しく笑った。
やっぱり冬はこたつに限るな。そう思っていると、ミチルが声を上げる。

「見て、椿ちゃんから」
とオレに見せてきたのは、爺さんや婆さんが出すようなお堅いかんじの年賀葉書。そこに綴られた文章も面白みがなく、苦笑が込み上げてきた。

「さすが、空気ヨメ男だな」
「それは関係ないと思うよ。………あ、ミモリンの」
「おぉ」

こちらもさすがの丹生家と言ったところで、煌びやかな装飾が疎らに施された葉書はそれなりの重量を兼ね備えている。

「これは……デージーちゃんからだ」
「なんだっけそのキャラクター」
「む、……ムイムイ?」
よくわからないキャラクターが描かれた葉書には矢印が引っ張られ、ご丁寧に「ムンムンだ」と慣れた文字で綴られていた。
ああ、と二人で頷くと同時にオレのほうを盗み見るミチル。

「安形からのが無いね」
「そうだな」
「まためんどくさいとか言って出してないんだろ?」
「まあなー」
「まったく…」
呆れたようなため息をつき、オレに背中を預ける。

「来年は出すって」
「それ去年も聞いた」
一応フォローを入れてみたものの、あっさりと切り捨てられた。苦笑を浮かべて腹に回したオレの腕に手を置いたミチルは、どこか楽しそうで。


「本物がいるんだからいいだろ」
「なんかその言葉、上手いこと宥められてる気がする」
「気のせいだ気のせい」
ふは、と笑ったミチルにつられてオレも口角が上がり、高揚した気持ちで後ろからキスをした。

そのまま何度か唇を交わしながら体位を変えてゆっくりと床に押し倒せば、戸惑った表情が窺える。

「………正月早々?」
「あ?いや、違う」
オレの頬に手を沿えて肩を竦めるミチルの手首をとり、それも床に押し付けた。もう一度触れるだけのキスをした後、覆いかぶさるようにミチルを抱きしめる。

「どうゆう展開ですかこれは」
「眠りに入る展開」
「なんじゃそりゃ」
「正月と言えば寝正月だ」
「え、寝るの?今から?」
頷く代わりにぎゅう、と抱きしめる力を強くしてやれば ため息をついたミチルの腕がオレの背後に回った。

体勢を崩して、今度はオレも床に寝そべる。向かい合うのは恥ずかしいというミチルの希望で、再度オレがそいつを背中から抱きしめるという体勢に落ち着いた。

「今日は初詣行きたかったんだけどなぁ」
「元日は家でダラダラって習わしがあんだろ」
「それ安形だけだって」
「そうか?」
そうやって話しているうちに、足元の温かみとミチルの体温で 眠くなってくる。座布団を引き寄せて頭をのせミチルの足に自分のそれを絡ませてみると、赤ん坊をあやすかのような小さい声でおやすみと聞こえた。


end


(まあ、お前といられれば)
(いつでも幸せなんだけど)


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