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「うぎゃっ」
遠くで、雷が鳴り響く。それに合わせて、俺の隣で全く色気のない悲鳴を上げるのは 恋人としてウチにやって来たミチルだった。
バケツをひっくり返したような土砂降りの中、体を縮こませている。いつもならこんなのどってことないのだろうが、今夜は違った。


がるお前に


遡ること数時間前
今日は、恐ろしいと噂のホラー映画が夜からテレビで放映されるということで
一人で見るのは忍びない、そう言い放ったミチルを自宅に招き 二人で鑑賞することになったのだ。

もとよりそういった類の物が苦手なのかそうじゃないのか定かではないが、確実にコイツはビビっている。

『キャアアアアア!!』
なんだか嘘くせぇなと思いながら頬杖をつき、液晶画面に映る外人女優を眺めた。無惨な衝撃音、内蔵をえぐり取る音、まあ…ビビらない訳でもないが。

「うわぁ…、ちょ、あぁあぁあぁダメだろそれは…」
青い顔して隣で震えられれば、こちらの気持ちがミチルに向いてしまうのも必然的で。ハンパなく怯えてる人が近くにいると、自分は大したことはない 結構本当のことだな。
それからもホラー映画鑑賞は続き、その間もミチルは肩をびくつかせているだけだった。


そんなこんなで、今に至る。

さっきまではカラリと晴れていた夜空はもうなく、急に降り始めた雨粒はバツバツと窓ガラスを打った。そう悪天候だと、ミチルのビビりっぷりは二重になる。
いくらそういう映画を見たからと言って、雷で涙目になるのは何故かと問いたくなるくらいだ。
……でも、まあ、やっぱりそれなりに可愛いものは可愛い。

「もうやだ……ちょっと安形、雨止めてこいよ…」
「できるわけあるか」
一生懸命俺の服を掴み、何が怖いのか瞼を強く閉じているのを見ていると、心の奥からじわじわと込み上げてくるものがあった。…所謂、「むらッ」なんだけども。

「雨は止められねえが、膝貸してやるからこっち来い」
「…」
くん、と手を引いてやれば、無言でミチルがオレの太股にのってくる。普段ならもう少し抵抗を見せていた気がしたけど、可愛いからなんでもいいや。
ムラムラした感情は未だ治まっておらず、ミチルが自分の期待通りに動いたのをいいことに 鎖骨辺りに唇を落とした。
その流れで首筋を舐めると、細い腰がしなる。


「…安形、やらしいこと考えてるでしょ」
「や、別に」
「…嘘くさ……」
くしゃりと人の髪に指を絡ませて、そのまま下に下りていく手が艶めかしく動く。
それが了解の合図だと認識した堪え性が備わっていないオレは、シャツに手を滑りこませながらミチルを押し倒した。


end




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