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「ミチル、好きだ」


「うん、オレもー」



放課後の生徒会室は、常にピンク色のオーラで持ち切りだった
それは今の二言で確実に証言できる。
指定席の椅子に座った安形会長のすぐ側でにこやかな笑みを浮かべているのは、いつも通り榛葉さんだ。

見ようと思っていなくても、書類を片付けている端で戯れられていたら、嫌でも視界に入ってくるのは当たり前で。隣の席の浅雛も前に座っている丹生も、毎度のことながら居心地が悪そうだった。

「ミチル」


ぐい、と榛葉さんの腕を引いた会長は、そのままの流れで榛葉さん着用のセーターに顔を埋める。ちょっと、とそれを離そうとしている榛葉さんを無視して会長は深く息を吸った。


「…安形、こうゆうのは家帰ってからに」

「んー」


「んー、じゃないでしょ」

「おー、やっぱ好きだわミチルのこと」


「オレも好きだよ」


いつまで経っても同じような会話をエンドレスで垂れ流す先輩二人に痺れを切らし、大きな音と共にその場に立ち上がる。

「お二人とも、仕事をしてください」


いくら仕事を全くしない先輩だろうと、さすがに刺々しく命令は出来まい。その思考に伴って、押し殺すような声が出た。

「え、ああ…ごめんね、椿ちゃん」


はっとなった榛葉さんがこちらを向き、頭を掻きながら渋い顔で笑う。そろそろと会長の魔の手を剥がして、自分の席に座ったのだった。

その横顔が赤いのを、ボクは知っている。
(恥ずかしくなるんだったら最初から戯れなければいいのに)

そうは思っても、やはり自ら地雷を踏みにいくような真似はできなかった。




(だって、習慣になってるんだからやめることなんてできないよ)


白は日課のひとつ


title:空色の雫




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