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第三者視点

***

ミチルさんがお兄ちゃんに会いにくる時、いつも疑問に思うことがある。この人は、お兄ちゃんの何を好きになったのか、っていう中々に小さなこと。

アタシにとってお兄ちゃんは自慢の兄だけど、正直言って恋人にはしたくないタイプ。面倒臭がりでいつもうだうだしているお兄ちゃんが、微笑むだけで過半数の女の子をメロメロにさせてしまうくらいかっこいいミチルさんをどうやって手中におさめたのか、不思議でならなかった。

(別にお兄ちゃんを否定してるわけじゃないんだけど)


きの理由


二人の関係に気がついたのは、半年くらい前。…気づいたっていうか、気づかされたっていうのが正しいのかもしれないけど。
お互いがお互いに送り合う視線が尋常じゃなく熱っぽいのとか、やたらとスキンシップが多いとか。
夜中に隣の部屋からミチルさんらしき人のか細い声が聞こえてきたときは、さすがに驚いた。

いつもキラキラスマイルで校内を賑わせているミチルさんのそんな姿はすごく珍しくて、お兄ちゃんしか知らない顔とかがあるんだろうなって、妹ながらに誇りに思う。
同時に、何故ミチルさんはお兄ちゃんだけにそんなあられもない姿を見せられるのか、という感情が巻き起こる。恋人だからとか、そうゆうことじゃなくて、もっと具体的な ミチルさんの根っこにあるお兄ちゃんに対する気持ちを聞いてみたかった。

「ミチルさん」
「ん?どうしたの?」
サーヤちゃん、と付け足したミチルさんは今、キッチンでお昼ご飯を作ってくれている。
アタシも一緒に、とのことだけどお兄ちゃんとミチルさんのひと時を邪魔しない為にアタシは部屋で食べるつもりだ。
当のお兄ちゃんはというと、昼間からお風呂に入っていて不在中。今がいいチャンスよアタシ、ミチルさんの後ろ姿を見てそう思いながら、口を開いた。

「ミチルさんて、お兄ちゃんのどこらへんが好き?」
それを聞いた途端、ミチルさんが思い切り吹き出す。げほげほと咳込む頬には、赤みが差してきていた。ぐし、と口元を拭う手までもが真っ赤になって、意外な一面を見た気がする。

「っ、サーヤちゃ、何言って…」
「んー、ちょっと気になったから」

あまりにも可愛らしい反応に、こっちまで恥ずかしくなった。がちゃんがちゃんと慌ただしい金属音が聞こえ、思わず笑いが零れる。

「で、で?どこらへんが好きなの?」
「えぇー…」
少し落ち着いたのか、赤い顔のまま下を向き垂れ下がった茶色い髪を耳にかけながらフライパンを動かした。
美味しそうな音を奏でるそれに向けられた視線に伴って、伏し目がちになる。瞼に沿って生えた睫毛に、思わず見とれた。

「お兄ちゃんは確かにかっこいいけど、ミチルさんはどこに惹かれたのかなって思って」
「……どこにって、言われてもなあ…」
わしゃわしゃと自分の髪を乱して更に下を向くミチルさんの耳も、首も手も真っ赤。今まではかっこいいっていうイメージしかなかったけど、お兄ちゃんの話になるとこんなに可愛くなるんだと思うと お兄ちゃんがミチルさんを選んだのも何となく納得できる。

「…人を本気で好きになった時ってどこがいいとかここが好きとか、わからないと思うんだよね」
「?」

「安形はムカつく所も沢山あって、「なんで付き合ってるんだろ」なんて思う時もあるんだけど」



「それより、「やっぱり好きなんだよなあ」って思うことのほうが、多いんだ」
ふ、と愛しいものを想うかのような笑い方が、斜め後ろからでも窺える。幸せそうな目元は、いつもより数段優しかった。

「つまり、好きに理由はないってこと?」
「っう、……ん」
ごめんね、と何故か謝られる。頭の上に疑問符を浮かべていると、後方で扉の開く音がした。
二人で反射的に振り向くと、黒い髪を濡らしたお兄ちゃんがそこにいて。

「…ミチル」
「え、あ、安形、もしかして今の……聞いてたってことはないですよね」

「ばっちり」
「……」
やってしまったと言うかのように顔をしかめたミチルさんの額に、いくつもの水滴が浮かぶ。
あれ、この展開は。

「ミチル、ちょっと来い」
「え?は?ああああ安形さん!?」
ずかずかとミチルさんに近づいたお兄ちゃんが、その白い首に腕を回す。苦しそうな顔をしたミチルさんは、なんだかんだで嫌そうな表情は微塵も見せていなかった。
ご愁傷様ですと心の中で手を合わせ、引きずられるミチルさんと引きずるお兄ちゃんを見送る。


(お昼ご飯は、ホリィを誘ってファーストフード店にでも行こうかな)

助けを求めるミチルさんに胸の内で謝って、ポケットから携帯を取り出した。


(ナイスだサーヤ)

(さすがオレの妹!)


end


自分で書いといて言うのもあれですけど

サーヤGJ!!
結局あなたの疑問は解明されなかったけども

サーヤGJ!!!!




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