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オレには、一つのこだわりがある。
こだわりというか、何となく心の中にある決まり事だ。
大したことなさそうに思えるその行動は、今のオレを作り上げるための大きな一歩になった。


「あ、ねえ、君」
近くを歩く女の子を呼び止めると、その娘はこっちを向いて制止する。え、え、と顔を赤くして吃る姿を見る限り、オレに憧れを抱いてくれているのだろう。やっぱり女の子はいいな、なんて。
安形の前で言ったら不機嫌になられかねないから言わないけど。


だわり


「荷物、重そうだね。持とうか?」
「え、あ、いや…」
眼鏡をかけた女の子は、見事に赤面している。重そうな段ボールを両腕に抱えて、目の前に立ったオレを見上げた。
"女の子が荷物を持っているのを見たら率先して声をかける"これはやっぱり男として当然のことだと思っているし、実行できてなんぼだろう。

「だ、大丈夫です!全然重くないんで!」
「ううん、持つよ」
首を振って拒むその娘にそう言って優しく微笑めば、じゃあ…とおずおずと段ボールがオレに渡る。家庭科準備室まで持ってほしいということを聞いた後で、ここから階を重ねた所にある目的地に向かって歩き出した。

放課後の廊下には生徒は見当たらない。部室や体育館で部活に励んでいる人がほとんどで、廊下に出ている暇はないらしい。
オレも生徒会室へ行くため早めに用事を終わらせようと思い足を速めた刹那、後ろから人が歩いてくる気配がした。

「安形。どうしたの?」
きゅ、と床を踏み鳴らして振り返ったところにいたのは、右腕に丸められた模造紙らしき物を持った安形だった。

「どうしたのって、普通に生徒会室に行こうと。ミチルはどうしたんだ?」
その荷物、と付け足して段ボールを指差す安形から両腕のそれに視線を移す。ほんとは特に興味もないのだろうけど、気にかけてもらえるだけで嬉しかった。

「これ、女の子が重そうにしてたから」
「またお前はそうゆうの軽い気持ちで引き受けたのか」
「引き受けるのは当然でしょ。ていうか、気分で物言う安形には言われたくないな」
冗談混じりに笑うオレに、急に安形が腕を伸ばしてくる。不意をついて出されたそれに体が反射的に身を引いた。
不思議そうに眉をひそめた安形、それを一歩引いた所から見るオレ。一体どんな構図だ。


「こ、ここ、学校だけど」
「いや、手ぇ出そうとは思ってねえよ」
「あ、そうなんだ…」
反射的にとは言え、勝手に勘違いして退いた自分が恥ずかしくなる。じわりじわりと頬を侵食していく熱に、どこかに行ってくれと懇願したくなった。
再度伸ばされてきた手は、オレが持っている段ボールにかけられる。

「え、だからなんだよ」
「段ボール貸せ、持ってってやるから。どこに運べばいいんだ?」
「いやいやいや、いいよいらないよ一人で持って行くから」
いきなり何を言い出すのかと思えば、安形の口からは考えられないような言葉が出てきた。
ぐ、と段ボールに力を入れた安形に首を振って拒否する。

(…何だこの安形!)
こいつは人に気を遣うなんて技術持ってなかったはずだ。


気を遣うことは日常茶飯事であっても気を遣われるのはまったくもって慣れていないと言っても過言ではない。それが恋人である安形であっても、なんだかむずむずしてくる。
半ば強引に取られた段ボールの分体が、ぎこちなく軽くなった。代わりにと渡された模造紙に移った、安形の温もりを感じる。

「………安形に気を遣われるなんて、凄く微妙な気分だ」
「有り難く気遣われておけばいいじゃねーか、いっつも肩張ってんだから」
よっ、と重たそうにそれを抱え直した安形が、そう言いながら肩をぶつけてくる。早く目的地に連れていけということらしい。
家庭科準備室の位置をほとんど把握してない安形を誘導するため、袖を掴む。そこまでする必要もないかと思ったけど、なんとなく、触りたかった。

「…オレ、肩張ってるわけじゃないんだけどなあ」
「張ってるように見えるんだよ。疲れたら、頼れ」



「お前になら頼られても面倒臭くはないからな」


安形がそう呟いたのは、聞こえないフリを決め込み無視をした。


end


終わり方微妙や!…な、なんで無視するん?榛葉さん←
そして安形。あなたはこんなに優しくないよね?((すごく失礼)
このあと家庭科準備室でイチャコラして生徒会に遅れて椿に説教喰らうとかね。




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