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ある車のCMパロ
大学生あたり設定

***

「安形なんか嫌いだ」
北風が吹き抜ける公園で、小さく呟く。
ぎゅう、ときつく握り締めた拳に更に力が入った。

せっかくの休日は苦悶に満ちて、肺にもんもんとした煙がかかっているみたいだ。
好きでこんな感じでいるんじゃない。オレだってもう少し、もう少し、寛容的な心を持っていたはずなのに。

「…安形に言い訳させてやればよかったなあ」
安形のことになると、あられもない姿が顔を現す。もう、引っ込めよ馬鹿。


きなもの、嫌いなもの


でも、あれは安形が悪いんだ。オレに嘘をついて飲み会という名の合コンに真っ昼間から参加しちゃったりして。
その上、女の子にべたべた体触らせて。
たまたまそこに居合わせたオレに顔をしかめたもんだから、さすがにカチンときた。着の身着のままで突っ走ってきてたどり着いた場所がこの公園だ。
本当に、あほらしい。馬鹿みたいだ。オレも、安形も。

沸点が低すぎて、嫌になる。




そこに何十分と居座って、心が落ち着いた頃には、既に日は西に傾きかけていた。オレンジに染まった公園の地面に、オレの影が不安定に伸びる。
しばらく冷たい空気に晒されてた頬は当たり前のように乾燥していて、きっと寒さで真っ赤だ。
未だ吹き付ける風が靡かせる髪の毛が、ぺしゃんと顔を叩いた。何故かそれだけで寂しくなって、その気持ちを振り切るように明るめの茶色に染まった髪を払いのける。

しょぼしょぼと徐々に縮んでいく心を奮い立たせたくて次は右手で頬を叩いてみても、ただジンジンと痛みを残すだけで意味を無し得なかった。

ばか安形、安形のばか、

「…………安形ぁ…」

面倒臭いとか言って、がっぱがっぱ酒飲んでるんだろうな。
追い掛けようなんて、カケラも思ってないんだろうな。
こんなちっちゃなことで、終わっちゃうのかな

「……安形、」




「なんだよ」


「え、」


じゃり、という地面を踏み鳴らす音がすぐ目の前から聞こえる。次いで降ってきたのは、たった今名前を呼んだ本人の声だった。

「あ、あがた、なん…」
「ミチル、お前な…人の話も聞かずに突っ走ってんじゃねぇよ」
はあ、と肩を落とした安形の額には、冬真っ最中なのに汗が粒となって浮かんでいる。ドカッとオレの隣に腰を下ろした安形に、動揺で心が揺れた。

「すげえ探したんだけど」
「う、嘘だ」
足を組みズボンの上に置いたオレの手に安形のそれが重なる。どうしよう、軽く震えるんですけど。気づかれてないかな。

「嘘なんかじゃねぇ。冬にこんな汗かく程度には走り回ったわ」

そう言って触角みたいな前髪(って言ってもいいのかな)を上げた安形が、へらりと笑った。拳を包み込んだ大きな手と情けない笑顔が温かくて、妙に泣けてくる。


「あ、あが、あがたに、き、嫌われたんじゃないか、と、思った…」
ぽたぽたと落ちる雫に驚いたらしい安形が、目を見開いたまま袖でそれを受け止めてくれた。
導かれた腕の中で声を殺してひとしきり涙を流すと、目元を宛てていた肩口がしっとりと濡れる。

「お前はオレの面倒臭がりを買い被りすぎ」
「買い被るってそうゆう使い方しないと思うんだけど…」


喧嘩は嫌いだ


けど



「ミチル、悪かったな」
「…オレも、ごめんね」



仲直りする瞬間は、すき。


end


とあるCMを見ていたところ
「はぅあ!!」ときまして。
喧嘩の理由とか薄っぺらい気もしますが、とりあえず書き切れて満足です。




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