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「ミチルの心拍数が知りたい」

「……は?」
頬杖をついた安形がぽつりと、そんなことを呟く。寝転がって本を読んでいたオレには一瞬、その言葉の意図がわからなかった。いや、数秒経った今でもよくわかっていない。


「ミチルの心臓の感じとか、血管の感じとか、把握してみたい」
「いやいやいやいや、なんですかそれ。体内のこと知りたいって、ヤンデレ?」
「そうゆうことじゃねぇよ」
こっち来い、とオレの腕を引いた安形のもとに引き寄せられその隣に腰を落とせば、そっと手首をとられた。


じる


「ちょ、…安形」
「ん」
「何すんの」
「脈を測ろうかと」
人の腰に手を回した安形は、手首を掴んだまま喋る。怪訝に眉を潜めたオレを数秒眺め、掴んでいたそれを持ち上げた。そしてそのまま手の甲に唇を寄せ、キスを落とす。

「……え、なに」
「別に何も」
唇が当たった部分からじわじわと、体感温度が上がっていく。意地の悪い笑みに伴った妖艶な瞳に、意味もなく頬が熱くなった。


「脈が、すげえな」
「…う、るさい」
ふ、と口を緩めた安形を見て再度心臓が跳ねた。こんなんでドキドキしててどうするよ、オレ。

力を入れて目を瞑り事が終わるのを体を硬直させたまま待っていると、ふと右手首を放された。はあ、と一息ついて余韻に浸っていると、不意に安形が動き出す。
脇から入れた腕に背中をホールドされ、動けない。次はなんだと眉をひそめたオレに何かを企むかのような笑みを向けた安形が、左胸に耳を当てた。

「…っだー、もう、お前は何をしているんだ、っつの!離れろ!」
「…」
「聞いてんのか!安形!」

「うるせえ。ちょっと黙って」

「っ…」
ベッタベタな台詞を吐き、ベッタベタにキスをしてくる安形。熱い息を吐いたオレを無視して、もう一度キスする前の体勢に戻った。

拘束された左手の代わりに、右手を安形の頭に沿える。抵抗しよう等という気はとうに失せていた。


「も…なんなの、ほんとに」
「なんか、安心するわ。……ミチル、緊張しすぎじゃね?」
女の子特有の凸があるわけでもない、ひらべったい胸に耳を押し付けて何をしているんだこの男は。オレはオレで、恥ずかしがるようなことはないくせに、心臓が通常より早く動く。

小さなため息の後、安形の体温も知る為に目の前の黒い髪の毛に頭を埋めてみた。今に見てろよ安形惣司郎。


end


結局安形元会長は何をしたかったの…?
数日間かけて書き進めてきたものなのでなんだかいろいろブレブレですみません。


……とか、言い訳してみる←





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