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『今すぐ、生徒会室な』

「は?え、ちょっとあが…」
ブツ、と一方的に電波は断ち切られ 無機質な電子音だけが耳のすぐ横で聞こえる。昼休み、ざわざわとした教室の中で訳のわからないまま一人だけ固まっている姿は、さも不思議なことだろう。
もう一度かけ直そうと思い安形まで電波を飛ばしても、留守電に繋がるだけで 当の本人は出てこなかった。

まあ、とりあえず行ってみるしかない。まだ食べ終えていない弁当を包んで、ゆっくりと立ち上がった。


び出す真意とその後は


廊下にもやっぱり生徒は何人か居て。ミチルさーんと声をかけてくれる女の子に手を振りながら、早足で呼び出された場所に向かう。
その間も、何故呼ばれたのかわからないままで 思考回路はその理由を考えるだけで一杯だった。


「…安形ー?」
そう言って生徒会室の扉をスライドすれば、そこにはやはり 頭の後ろで手を組んでいる安形がいる。

「おー、来たか」
ミチル、といつも通り何かを企んでいるような笑みで名前を呼ばれた。渋々その近くに行くと、不意にぐい と腕を引かれて、前のめりになる。

「…なんだよ、いきなり呼び出して」
「特に意味はない」
髪をわしゃわしゃとなでられて、自分の意思に関係なく鼓動が早くなった。無駄に静かな生徒会室で、近すぎるくらいの距離。オレを見つめる視線も吐息も熱くて、こっちの息が止まりそうだ。

「…」
「お前に会いてぇな、と思って」
先程までの笑顔とは打って変わっての優しい笑い方で、心臓がきゅん ってなった。
そのせいで、安形に触られた至る所がジンジンし始める。

「い、いつも放課後会ってるじゃん」
「今会いたかったんだよ」
若干被り気味に言ったと思ったら、甘ったるい声でもう一度名前を呼ばれた。
首に回った腕とか、中腰になったままのこの体勢も中々キツイなとかその他諸々色んなことを考えた後
オレから、もたれ掛かるように安形を抱きしめた。そして顔を隠す為に、肩口にそれを埋める。

「おほっ、なんのサービスだ」
「…うるさいな」


それから何度も甘いキスを交わしていれば、時間感覚がなくなるのも必然的といったところで
ぼーっとしていた頭に、昼休みの終了を告げるチャイムが響いた。

「…あー……も、行かなきゃ」
言って、胸板を押すと 最後は頬にに唇を落とされてから体同士が離れる。
クラクラとはっきりしない頭を抱えながら扉に向かう途中、あることを思いついた。

「…人に会いたくなったら、自分から会いに来てよ」
なるべく無表情を保って言うのも難しいものだ。

「あぁ、わかった」


納得した様子で口を開いたって、その口端が上がっているのを見るとまたオレが呼び出されるのは確実だと手に取るみたいにわかる。
……まあ、二人きりなら 肌と肌で安形の体温を感じられるから嫌いではないかな。
そんなアホ丸出しな考え、絶対安形なんかに教えてやらないけど。


end




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